【10月23日 AFP】昨年台湾で、香港人の男が妊娠していた交際相手を殺害して香港に逃亡し、その結果香港政府が「逃亡犯条例」改正案を提起、ひいては大規模な抗議デモの発端になった事件の容疑者の男が23日、別の罪での刑期を終えて釈放された。

 男は台湾で司法の裁きを受ける意向を示しているものの、台湾・香港両当局による対応の足並みがそろわず、現時点では自由の身となり香港にとどまっている。

 チャン・トンカイ(Chan Tong-kai)容疑者(20)は昨年、台湾旅行中に妊娠中の交際相手を殺害したとして、台湾で指名手配されている。

 この事件をきっかけに香港政府は、犯罪容疑者の身柄を、中国本土を含め同国全域への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案を提起。同案は最終的に撤回されたとはいえ、香港住民から激しい反発を招き、大規模な抗議デモが繰り返されている。

 チャン容疑者は香港に逃亡する前に交際相手の所有物を盗み、それに関連したマネーロンダリング(資金洗浄)の罪で有罪判決を受けていた。1年6月の刑期を終え、23日に重警備の刑務所を出た。

 同容疑者は、遺族に多大なる「心痛と苦悩」を与えたことを謝罪。「自ら出頭し…台湾に戻って裁判を受け、刑に服したい」と述べた。しかしチャン容疑者は目下、香港を出て台湾入りすることができず、自由の身となっている。

 台湾当局は、チャン容疑者が一般旅行者として台湾に渡航することは認められないと主張。蔡英文(Tsai Ing-Wen)総統は、同容疑者は自首ではなく逮捕される必要があると指摘した。

 台湾側は、同容疑者を連行するため人員を香港に派遣することを申し出て香港に許可を求めたが、香港側はこの要求は敬意を欠くもので「全く受け入れられない」と拒否したとされる。

 双方は、司法より政治的な駆け引きが優先されていると互いを非難している。(c)AFP