【10月23日 AFP】2017年秋、自転車に乗りながらドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の車列に向かって中指を立てる姿を写真に撮られて会社を解雇された米女性が、2年たった現在、民主党の候補として地方選に立候補し、政界進出を目指している。

 バージニア州ラウドン(Loudoun)郡。フレンドリーな雰囲気とブロンドヘアが印象的なジュリ・ブリスクマン(Juli Briskman)さん(52)は、11月5日の選挙に向けて一軒一軒回りながらパンフレットを配っている。

 近隣の男性は「ああ、彼女が大統領に中指を立てた人かい?」「仕事を失い、今は選挙に立候補していると聞いていた。素晴らしい。活力が気に入った」と語り、トランプ氏なら中指を立てられて当然だと笑った。

 ブリスクマンさんは2017年10月、ゴルフ場「トランプ・ナショナル・ゴルフクラブ(Trump National Golf Club)」の外でトランプ大統領を護衛する黒いSUVの列が通り過ぎる際、トランプ氏に対して感じていたことをそのまま行動で示した。

 AFPが撮影した写真は永遠のものとなり、瞬く間に拡散された。しかし、また同時に米政府や軍関係先を顧客とする会社に勤めていたブリスクマンさんは、市場アナリストとしての職を失うことになった。

 政治的に分断した米国で、ブリスクマンさんの行為はさまざまな受け止められ方をした。ブリスクマンさんの中指が抵抗の象徴だとみなす人もいた一方、抗議や脅迫も寄せられた。

 ブリスクマンさんはまた、不当な解雇だとして以前の勤務先を提訴。言論の自由の侵害だと訴えた。

 ただ、解雇されたことによって「多くの道の扉が開かれた」とブリスクマンさんも認めている。10代の子ども2人を育てるシングルマザーは、新しい職もすぐに見つけた。そしてその後、民主党枠で郡政執行官に立候補しないかと打診を受けた。

 決断するのに時間はかからなかった。長く地域社会に関わっていたこともあり、政界への進出はブリスクマンさんにとって理解に難くなかった。

「トランプの対抗馬にはなれないけれど、この選挙に出馬し、この地で変化を生み出すことはできる」

 2年前の騒動を覚えている人はいないようにも思える。しかし、ブリスクマンさんの元には今も「臆病者」といった匿名の脅迫文が届くという。ブリスクマンさんは戸別訪問の際、民主党を支持していそうな家庭にターゲットを絞るためにアプリを利用し、不快な接触を避けるようにしている。(c)AFP/Sébastien DUVAL