【10月23日 AFP】世界の博物館に所蔵されている鳥や哺乳類などの生物標本が雄に偏っていると指摘する研究結果が23日、明らかになった。

 英ロンドン自然史博物館(Natural History Museum in London)生命科学部門の研究員ナタリー・クーパー(Natalie Cooper)氏のチームは、世界5か所の博物館が所蔵する標本約250万点を分析した。中には100年以上前に作製されたものも含まれていた。

 鳥類の標本のうち約半数は性別が確認されていなかったが、識別されていた中では雌は40%だけだった。一方、哺乳類の標本では、性別が確認されているもののうち雌は48%だった。

 クーパー氏はAFPに対し「雄を標本にしようという傾向がいくらかあったのではないか。科学を行っているのは人間で、人間は男性への固有バイアスを持っているからだ」と述べた。

 クーパー氏は130年前に作製された標本と最近の標本を比べて、雌と雄の比率がほとんど変わっていない事実に驚いたという。「19世紀の博物館では標本の収集者はほとんど男性だったが、それは変わりつつある。しかし今でも男性中心の分野だ」

 標本の作製方法が、問題の一部を担っている可能性もある。雄は体がより大きかったり、より目立ったりするために、見つけやすく採取されやすい場合があるからだ。

 しかし今回の研究によると、雌の方が雄よりも大きかったり、派手な姿をしたりしている種でも、雌の標本が占める平均比率は44.6%にすぎなかった。角、枝角、牙などの「飾り」を持つ哺乳類では、雌が同様の飾りを持つ場合でも、標本の収集者は雄を選んでいた。

 収集者が「飾りを持つ雄」を好む傾向は鳥類でもみられた。雌よりも色彩が豊かだったり、飾りが目立ったりする雄が、特に熱帯地方に生息する鳥などで標本として好まれていた。

 クーパー氏は「雌を無視した研究では、生物の全体像が描けない」と指摘。雌の習性が明らかになれば、雌と雄でよりバランスの取れた標本の収集に役立つのではないかと述べた。(c)AFP/Elizabeth DONOVAN