【10月23日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は22日、自身に対する弾劾調査を「リンチ(私刑)」と呼び非難した。リンチは黒人に対する差別の歴史を想起させる言葉であり、トランプ氏が弾劾調査の信用を傷つけるためにこれを使用したことで野党・民主党の黒人議員らからは批判の声が上がっている。

 トランプ氏はこれまでも弾劾調査について、民主党による「魔女狩り」の一環だとして繰り返し非難してきたが、同日にはツイッター(Twitter)への投稿で特に強い語調で批判を展開。「共和党員は全員、自分たちがここで目にしていることを覚えておかなければならない――リンチだ」と書き込んだ。

 リンチは奴隷制の影響が残っていた暗い時代を思い起こす言葉。米国では1882年から1968年の間、3400人余りのアフリカ系米国人がリンチにより殺害された。トランプ氏の投稿を受け、黒人を多く含む民主党議員らは一斉に反発した。

 米議会で最も高位の黒人議員である民主党のジェームズ・クライバーン(James Clyburn)下院院内幹事(サウスカロライナ州選出)はCNNに対し、「これはどんな大統領であっても自らに対して使ってはいけない言葉だ」と指摘。「私は南の産物だ。この言葉の歴史を知っている。使うのに非常に慎重にならなければいけない言葉だ」と述べた。

 共和党議員からはトランプ氏の発言を公に批判する声はほとんど出ていないが、同党のミッチ・マコネル(Mitch McConnell)上院院内総務は「残念な言葉の選択だ」との見解を示した。

 弾劾調査では22日、ビル・テイラー(Bill Taylor)駐ウクライナ代理大使による非公開の議会証言が行われた。トランプ氏がウクライナ政府に対して政治的圧力をかけていたことに懸念を表明していた人物。ホワイトハウス(White House)は弾劾調査に協力しないことを決めたが、調査を推し進める民主党にとって、重要な証人であるテイラー氏の証言にこぎつけたことは一定の勝利となった。(c)AFP