■著名人の墓廟も破壊の対象に

 AFPとアースライズ・アライアンスが分析した人工衛星画像から、2014年以降に中国政府が掘り起こして破壊したウイグル人の墓地が少なくとも45か所に上っていることが判明した。このうち30か所は、過去2年間で破壊されたものだったとAFPが今年6月、明らかにしている。

 画像の検証結果について新疆政府にコメントを求めたが、政府側から回答は得られなかった。

 中国政府による墓の掘り起こしは、著名な人物が埋葬されている墓地でも例外なく行われている。アクス(Aksu)には、著名なウイグル人詩人の墓が置かれた大きな墓地があったが、中国政府はここを埋め立て、つくりもののパンダや子ども向けの乗り物、人工の池などがある「ハピネス・パーク(Happiness Park)」に造り替えた。米国在住のウイグル人は、この詩人の墓を「愛国的ウイグル人にとって現代の聖地」のようなものだったと説明している。

 ハピネス・パークについての取材をアクス政府に依頼したが、これに応じてもらうことはできなかった。

■歴史の破壊

 中国では都市化と経済発展により、無数の文化遺産や史跡が荒れ果てた状態になっている。そして、新疆ウイグル自治区での墓地に対する敬意を欠く行為をめぐっては中国政府への批判が高まりつつある。

 活動家や学者らは、墓の撤去が同自治区で特に目立つと指摘しながら、こうした行為がウイグルの文化的、精神的な場所を抹殺しようとするものと等しいと主張している。

 英ロンドン大学(University of London)東洋アフリカ研究学院(SOAS)の研究者レイチェル・ハリス(Rachel Harris)氏は、「墓地の破壊は現在進められている広範な政策の一部にすぎない」と説明する。

 そして、「聖廟や聖人の墓、家族の墓の破壊はすべて、人々と歴史の関係を破壊し、人々と彼らが住んでいる土地の関係を破壊するものだ」と付け加えた。

 墓地の破壊についての政府の説明は、理由がそれぞれ異なっている。区都ウルムチ(Urumqi)の国際空港近くで撤去された墓地については、都市再開発計画の一環だったとする地元政府の説明があった。他方で、もともとあった墓地の近くに新たに墓地をつくって墓を移動させたシャヤールの地元政府は、その行為が墓地の「標準化」を目的としたものだったとAFPの取材で話した。シャヤールでは、こうした墓地の移設が複数か所で行われていた。