■高度な神経系

 論文の共同執筆者で、仏西ブルターニュ大学(University of Western Brittany)の古生物学者のミュリエル・ビダル(Muriel Vidal)氏は、「イセエビも嵐が始まる時に一列縦隊で移動する」と現存する生物を例に挙げた。

「これは、嵐による乱流や水温の変化に対するストレス反応の一種かもしれない」

 イセエビに加えて、これも一列縦隊で移動する毛虫(チョウやガの幼虫)なども、今回の三葉虫の遠い仲間に当たる。

 もう一つのシナリオとしては、海底の整然とした行進が、例えば性的に成熟した個体が産卵場所に移動するような、季節的な繁殖行動だった可能性もあると、論文の執筆者らは示唆している。

 論文の主執筆者で、仏リヨン大学(University of Lyon)の研究者のジャン・バニエ(Jean Vannier)氏はAFPの取材に対し、集団行動は捕食動物に狙い撃ちされるリスクを減らす効果もあると指摘している。

 また、三葉虫が鼻先を前にして一列縦隊で海底を行進する行動は、それを促していた要因が何であれ、「ある程度高度な神経系」を持つことを示していると話す。

 バニエ氏は、「集団行動を示すには、個体間で合図を交わし合うのに適した神経系が必要になる」とし、「それは、動物進化の物語の非常に初期に登場した」と述べた。(c)AFP/Marlowe HOOD