【10月16日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に見捨てられたシリアのクルド人勢力は、米国にとって常に「便利な」同盟相手だった。いざという時には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国である同盟国トルコとの戦略的関係が優先される使い捨ての関係だ。

 トランプ氏が今月、シリア北東部からの米軍撤退を突然決めたことにより、クルド人民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は、トルコ軍とシリア国内の親トルコ派に翻弄(ほんろう)される事態となっている。SDFは以前、「クルド人民防衛部隊(YPG)」の名で知られていた。

 オクラホマ大学(University of Oklahoma)のシリア専門家ジョシュア・ランディス(Joshua Landis)氏は、「トランプ氏はクルド人よりトルコの方がはるかに重要だと決定した」と説明する。

「突き詰めていくと、これはトランプ氏単独の決定だとは思えない――米国は国益上、(クルド人よりも)トルコをはるかに重要視している」と指摘し、このことをトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領も理解していると続けた。

「だからこそ、エルドアン氏は国境での緊張を拡大させ、侵攻を続けている。いざとなっても、米国がクルド人のためにトルコに宣戦布告をすることはないと分かっているからだ」

 ライアン・マッカーシー(Ryan McCarthy)米陸軍長官は14日、米国はクルド人とトルコ人双方とパートナー関係にあるが、その両者は歴史的に「課題」を抱えていると指摘した。

 マッカーシー氏は、米軍が長らく非公式に唱えていたことを基本的には認めている。つまり、米国はトルコに複数の戦略的軍事基地を置いており、クルド人とトルコの間で何かが起こった場合には、常にトルコを選ぶということだ。

 マーク・エスパー(Mark Esper)米国防長官は「フォックス・ニュース・サンデー(Fox News Sunday)」のインタビューで、トルコのシリア侵攻は「容認できない」「無責任である」と非難しながらも、米国は「長年のNATO同盟国であるトルコと、SDFに代わって戦うとは約束していない」と強調した。