【11月10日 AFP】北朝鮮、白頭山(Mount Paektu)。金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長の父で前最高指導者の故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記は、この山に建てられた質素な木造小屋で誕生したと言われている。案内のガイドも疑問に感じている様子なくこう語り掛ける。「われわれの聖なる地へようこそ」──

 北朝鮮はチュチェ思想(主体思想)という独自の指導指針を展開し、公には国家として無神論を掲げている。しかし、中朝国境にまたがる休火山の白頭山は宗教にも似た話であふれている。

 長い間、白頭山は朝鮮民族の発祥の地であると考えられている。北朝鮮を建国した金日成(キム・イルソン、Kim Il-sung)主席が抗日活動を指揮した場所ともされ、その息子の金正日氏は父の活動拠点であった密営で誕生したとされている。

 白頭山は現在、生まれた時から歴代の指導者たちをあがめるよう教育されてきた、多くの北朝鮮の人々が訪れる巡礼の地となっている。

 北朝鮮の人々は外国メディアに対しては常に、体制への全幅の支持を表明する。朝鮮事情に詳しいある欧米の当局者はそれについて、国への信頼の厚さは多くの人に当てはまると指摘する。

 平壌の金日成大学(Kim Il-Sung University)で朝鮮文学を学んでいるという男性(30)は、中世の欧州における教会と教義の役割を引き合いに北朝鮮による指導が「隅々まで浸透している」と語り、「平凡な人間にとっては物語に疑いを挟む余地などない」と言い切った。(c)AFP/Sebastien BERGER