【10月9日 AFP】今から25年前、天文学を専攻する学生だったディディエ・ケロー(Didier Queloz)氏は、手作りの機器を使って夜空を走査観測していた。得たデータの信ぴょう性を数か月を費やして検証したケロー氏は、避け難い結論に達した。地球がある太陽系の外側に存在する惑星(系外惑星)が、初めて見つかったのだ。

 スイス人科学者のケロー氏と同僚のミシェル・マイヨール(Michel Mayor)氏の先駆的な研究に対して8日、2019年のノーベル物理学賞(Nobel Prize in Physics)の授与が発表された。

 ケロー氏は博士課程の研究の大半を、系外惑星検出技術の改良に費やした。運命の一夜は1995年10月にやって来た。それまで系外惑星は、SFの世界にしか存在しないものだった。

 ケロー氏とマイヨール氏は、天の川銀河(銀河系、Milky Way)全体での系外惑星探査で、すでに数々の難題を克服していた。

 両氏は仏アルプス(French Alps)の麓にあるオートプロバンス天文台(Haute-Provence Observatory)で独自の観測機器を苦心して組み立てた。これにより、惑星が周回していると推測される恒星から発せられる光を観測して、光の振動数の微小な変化を検出できるようになった。

 だが、また新たな問題が浮上した。両氏が発見した「ペガスス座51番星b(51 Pegasi b)」として知られる系外惑星が大きすぎるのだ。

 ケロー氏は8日、AFPの取材に応じ「われわれは惑星を発見して、誰もと同じように驚いた。発見された惑星が実に奇妙で、惑星として予想されるものとは全く異なっているからだ」と語った。

「それが惑星ではないことを証明しようとして、ミシェルと議論を重ねたことを覚えている。だが結局はいつも巡り巡って元に戻り、惑星以外に説明がつかないと話していた」

 系外惑星ペガスス座51番星bは木星とほぼ同じくらいのサイズだが、中心星との間の距離が太陽地球間の距離の20分の1足らずしかない。こうした大きさが、研究チームを当惑させたのだ。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の惑星科学・天体物理学者のサラ・シーガー(Sara Seager)氏は、当時の「大論争」をこう振り返る。ケロー氏らが系外惑星を発見した当時、シーガー氏は米ハーバード大学(Harvard University)の大学院生だった。

 シーガー氏は、AFPの取材に「自身の理論的枠組みが覆されるのを望む人は誰もいない。木星型惑星は中心星から遠く離れて形成されるという、学校で教わったこと全てを信じたかっただけだ」と語った。

「その惑星は見ることができず、写真もない。確認できるのは恒星と、恒星に対する作用だけだ。なので人々は、その作用(の原因)を何か他のものに帰着させたいと考えたのだ」