【10月8日 時事通信社】北朝鮮の漁船が日本の排他的経済水域(EEZ)内に出漁せざるを得ない背景には、経済制裁を受ける中、中国に近海の「漁業権」を売却したという苦しい台所事情がある。金正恩朝鮮労働党委員長は漁業の強化を号令しており、本格的な漁のシーズンを控え、北朝鮮漁船の密漁が増える見通しだ。

 中朝関係筋によると、北朝鮮は過去数年、漁業権を中国に売却して外貨収入を獲得。中国漁船が大量に近海に押し寄せているため、北朝鮮漁船は豊かな漁場のある日本やロシアのEEZ内まで出航を余儀なくされている状況にあるという。

 ロシア当局は9月、日本海のロシアのEEZ内で密漁したとして北朝鮮漁船を拿捕(だほ)。これまでに数百人が拘束され、拿捕の際に北朝鮮漁船が抵抗し、ロシア側に負傷者も出ている。

 正恩氏は、今年1月の新年の辞で「水産業発展の新しい道を開くべきだ」と強調し、漁業や養殖など水産業の技術向上や資源保護の強化を訴えた。昨年12月には、日本海側に位置し、冬季の「漁労戦闘」が行われていた朝鮮人民軍傘下の「水産事業所」を視察したことを北朝鮮メディアが報じており、力の入れようは明らかだ。

 正恩氏は視察の際、漁業関係者を激励し、過酷な沖合での漁業に配慮し、家族の生活を支援することを約束。貯蔵庫に積み上がった魚に満足を示して「人民と軍人の食生活に貢献するよう期待を表明した」ほか、全国の小中学校や高齢者施設への1日の魚の配給量を増やすよう指示した。

 脱北者で世界北朝鮮研究センターの安燦一所長によると、北朝鮮の大型漁船には小銃を支給された「保安要員」が同乗し、不測の事態に備えている。安氏は、「冬に本格的な漁業を行うため、日本のEEZに向かう漁船は増えるだろう」と警告している。(c)時事通信社