【10月8日 AFP】オランダの情報セキュリティー企業ディープトレース(Deeptrace)は7日、インターネット上で急増している、いわゆる「ディープフェイク」動画に関し、大半はポルノ動画だが、政治的な動機によるものも一部に含まれるとの調査報告を発表した。

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 報告は、ディープフェイクであることが判明した動画の96%が「同意を得ていないポルノグラフィー」で、人工知能(AI)によって偽造された動画の中で女性著名人らの画像が無断使用されていると説明した。

 さらに同社は、インターネット上に存在するディープフェイク動画は昨年12月から今年7月までの間にほぼ倍増し、1万4678件に上ったとした。

 報告によれば、ディープフェイクのポルノ動画の視聴数のうち、1億3400万件余りが上位4か所のウェブサイトに集中していた。ディープトレースのジョルジオ・パトリーニ(Giorgio Patrini)最高経営責任者(CEO)は同社公式サイトで、この状況は「ディープフェイクのポルノを作成・公開するウェブサイトの市場を表している。断固たる措置を取らなければ、この傾向は拡大を続けるだろう」と警告した。

 一方、同CEOはガボンやマレーシアの政治指導者が標的となった事例に言及し、ディープフェイクは「政治の領域にも重大な影響を与えている」と指摘。一部で顕在化している新たな事例として、実在しない人物の声や画像を合成してソーシャルエンジニアリング(人の心理的な隙を突いて情報を盗み取る行為)のために使い、企業や政府を狙う動きが強まっているとした。

 ディープフェイクをめぐっては、米国などでの選挙で有権者を操作するために使われる可能性があるとの懸念が高まっている。

 大手交流サイト(SNS)は改ざんされた動画を検出し、配信を阻止する取り組みを強化しているが、専門家らはディープフェイクの拡散を止めることはますます難しくなっていると述べている。(c)AFP