■正義を求める声

 2017年の軍による弾圧は、ラフィクさんの人生を一変させた。この弾圧で、既に20万人の難民が暮らしていた荒れ果てたコックスバザールの難民キャンプに、国境を越えてきた新たなロヒンギャ難民約74万人が加わることになった。

 暴力から逃れバングラデシュに向かうつらい旅の途中、ラフィクさんは大切にしていたスマートフォンをなくしてしまった。15歳の時、父親が買ってくれたものだった。

「母と年下のきょうだい3人と歩いた10日間はゾッとするような体験だった。いくつもの丘を越え、バングラデシュにたどり着いた」と、ラフィクさんはキャンプ内の掘っ立て小屋に座り、当時を振り返った。

 ラフィクさんは今、フェイスブックの有名人だ。ある投稿は約18万人を魅了した。イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」の期間中に瞑想(めいそう)する女性を捉えたもので、人が詰め込まれた難民キャンプで困難に直面しながらも、ついに宗教行為を行う自由を得たロヒンギャの姿が映し出されていた。

「国際メディアが難民キャンプで取材しているが、毎日24時間ここにいるわけではない。でも、私は毎日24時間ここにいる」と話すラフィクさんは、自分の物語がより現実に近いと自負している。

「私たちが正義を求め、故郷に戻りたいと思っていることを、私の物語は伝えている」

 映像はバングラデシュ南部コックスバザールのクトゥパロン(Kutupalong)難民キャンプで7月23日撮影。(c)AFP/Sam JAHAN