【10月23日 東方新報】中国の農業農村省は先月、第13期全国人民代表大会二次会議に、全人代の夏吾卓瑪代表(国会議員に相当)が提案した「動物権益保護・虐待禁止法」に関する提案について、必要な立法を早急に確立するべきだとの回答を行った。農業農村省によれば、動物への残虐行為を防ぐために、関連の法律が欠落していては有効な取り締まりが難しいとし、動物虐待禁止法を討議していると説明。ただ立法計画には入っていないという。

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 現状では、現行法を応用する形で動物虐待に歯止めをかけている。牧畜関連規定では、家畜・家禽(かきん)の飼育について、環境や設備、防疫、検疫、運輸に関して明確に「優良で効率がよく、エコで安全」であることが決められている。野生動物保護法では「野生動物の優先的保護、利用ルール、厳格な監督管理の原則」などが決められ、人と自然の調和ある発展を目指して、野生動物保護意識向上の公民教育も行われている。社会で議論の的となっている医薬品などの動物実験問題も、中国にはすでに「動物実験管理条例」が制定され、動物実験の管理は統一のルールや合理的な作業の分離などが明確にされているという。

 2010年に住宅・都市建設部が発布した「動物園管理強化に関する意見」では、動物園の飼料の質や、飼育環境、温度管理、医療や死亡した動物の死体処理に関する規定を明確化し、動物を使ったパフォーマンスも動物にストレスや刺激を与えてはならないとされている。

 動物虐待が社会に与える深刻な影響についても、現行法内で対応してきた。2002年に清華大学(Tsinghua University)の学生が北京動物園(Beijing Zoo)の熊に硫酸をかけた事件は、社会の反響が大きく、2003年4月に北京市西城区人民法院はこの学生に対して器物損壊罪の一審判決を出した。

 近年、ネット動画で動物虐待映像が頻繁に登場し、またこうした映像がダークウェブで売買される状況については、ネット安全法の「暴力・ポルノ映像・情報の伝播禁止」の規定で、映像制作者の法的責任を追及できるようになっている。総じていえば、動物虐待禁止法や動物福利法がなくても、動物虐待が引き起こす社会への悪影響を現行法は座視しているわけではない。

 ただ全人代代表の立法提案が反映しているように、社会の進歩や文明の発展にともない、より明確で系統的な動物虐待禁止法を整えることが、公平正義な法治社会の新たな要求に合致していることは間違いない。農業農村省は今回、国家が動物虐待禁止法の立法を支持しているという明確なサインを出し、動物虐待禁止法の早期実現を推進する姿勢を打ち出したといえる。 (c)東方新報/AFPBB News