【10月4日 AFP】自宅と勘違いして侵入したアパートで住人の黒人男性を射殺してしまった白人の元警官を、被害者の弟が抱き締めて許す──米テキサス州の裁判所で2日、尋常ならざる事件の裁判が感動的な幕引きを迎えた。

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 テキサス州ダラス(Dallas)在住のアンバー・ガイガー(Amber Guyger)被告(31)は2018年9月6日、自宅だと思って入ったアパートの一室でボッサム・ジーン(Botham Jean)さん(当時26)に遭遇し、不法侵入者だと信じて発砲した。ところが、その部屋は鍵のかかっていなかった1階上のジーンさんの自宅だった。当夜、ガイガー被告は14時間近い勤務を終えて帰宅したところで、警官の制服を着たままだった。

 ガイガー被告は1日、ジーンさん殺害で有罪評決を受け、2日に禁錮10年の量刑を言い渡された。その直後、ジーンさんの弟のブラント(Brandt Jean)さん(18)は「可能かどうか分かりませんが、彼女を抱き締めても良いでしょうか?」と裁判官に尋ねた。

 当初は返答をためらった裁判官だったが、ブラントさんがガイガー被告をハグしたいと再び訴えたため、許可。法廷内で2人は1分近く抱き合った。

 ガイガー被告は大きな声を上げて泣き出し、その様子を裁判所の職員らが沈痛な面持ちで見つめていた。

 兄弟の母親アリソン(Allison Jean)さんは、息子の行動に驚いたという。「ブラントの今日の振る舞いは、素晴らしかった。全て彼が自分で決めたことだ」とアリソンさんはCBSニュースに語り、アンバー被告に対するわだかまりを浄化する行為だったとの考えを示した。

 ただ、(このハグによって)「全員が完全に許されたと誤解されたくはない」とも付け加え、「ダラス市警、テキサス州公安局、ダラス市当局にはまだ、なすべきことがたくさんある」と指摘した。

 映像前半はガイガー被告と抱き合うブラントさん。後半はガイガー被告を抱擁する裁判官。米CBSテレビが2日撮影、3日提供。(c)AFP