【10月4日 AFP】地下水の過剰採取が、2050年までに世界の流域の50%にあたる河川、湖、湿地帯に「重大な影響」を及ぼすと警告する研究論文が2日、英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

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 食糧生産に欠かせない地下水は地中の土や砂、岩の隙間に存在し、地球上で最も大規模に利用できる淡水源となっている。現在、20億人以上が、飲料水やかんがい用水を地下水に依存している。だが、地下水の資源量は、世界的な人口爆発とそれに伴う穀物生産量の増加を受け、すでに圧迫されている。

 国際共同研究チームは、既存の地下水が世界各地の河川、湖、湿地に流れ込む速度を調査し、流出と呼ばれるこのプロセスに農業用水のくみ上げがどのような影響を及ぼしているか調べた。この結果、世界の流域の約20%で、既に地下水採取量が流出量を上回っていることが明らかになった。

 また、気候変動モデルを用いて今後どのくらい流出量が減少するかを予測したところ、2050年までに世界の地下水採取地域の42~79%で水界生態系を維持できなくなることも判明した。

 論文主筆者である独フライブルク大学(University of Freiburg)のインゲ・デグラーフ(Inge de Graaf)氏(環境水文システム)によると、これは破滅的な影響をもたらす可能性があるという。

 デグラーフ氏はAFPの取材に、「流れに水がなければ魚や植物が死ぬのは明らかだ」と話し、かんがい栽培されている作物の約半数が地下水に依存しており、大きな損失となると指摘した。

 論文によると、メキシコやガンジス川(Ganges)、インダス川(Indus)の流域など作物生産を地下水に大きく依存している地域は、過剰採取により既に河川流量の減少が発生しているという。

 地下水需要の増加に伴いアフリカや南欧も、今後数十年以内に水界生態学的限界に達すると研究チームは予測している。

 英国の研究者らは今年、地下水の補充には長い年月を要するため、未来の世代は「環境の時限爆弾」に直面するとの研究結果を発表していた。(c)AFP/Patrick GALEY