【10月3日 AFP】ドーピング違反で4年間の資格停止処分を科された陸上の大物コーチ、アルベルト・サラザール(Alberto Salazar)氏について、米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガート(Travis Tygart)最高経営責任者(CEO)は2日、同氏がアスリートを「モルモット」として使ったと語った。

 今回のスキャンダルで開催中の第17回世界陸上ドーハ大会(17th IAAF World Championships in Athletics Doha)に激震が走っている中、同大会から締め出されたサラザール氏は、自身が指導したアスリートに禁止薬物を使用したことはないと否定しており、異議申し立てを行う意向を示している。

 タイガートCEOは独公共放送のZDFで、サラザール氏が率いるナイキ・オレゴン・プロジェクト(Nike Oregon Project)の所属選手は、その合法性も含め、自分たちが与えられた物質について知らされていなかったと話している。

 サラザール氏とプロジェクトのドクターが使用していた手法は「単純に許容できない」としたタイガートCEOは、「選手は自分たちに与えられた物質の種類だけでなく、量や合法性も分かっていなかった。彼らはただドクターのところに送られて、『言うことを聞くように』と言われていただけだった」と語った。

 また、長年にわたりサラザール氏を支援してきた米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)が同氏との関係を見直すことを望んでいるとし、「ナイキが今回のことを警鐘だと考えてくれることを望んでいる」と付け加えた。

 ナイキ側は、異議申し立ての意向を示すサラザール氏を擁護する姿勢を見せながら、「いかなる状況においても、禁止物質の使用を許容しない」としている。

 これまでドーハ大会では、大会記録で男子800メートルを制したドノバン・ブレイジャー(Donovan Brazier、米国)らプロジェクトの所属選手2人が金メダルを獲得している。しかしながら、今大会に出場しているプロジェクトの所属選手からドーピング違反は出ておらず、USADAの報告書に名前が出た選手もいなかった。(c)AFP