【10月2日 AFP】中東で2011年に広がった民主化運動「アラブの春」の混乱のさなかに盗まれ、米ニューヨークの博物館に展示されていた黄金のひつぎがエジプトに返還され、首都カイロの国立エジプト文明博物館(National Museum of Egyptian Civilization)で1日、公開された。

 金箔(きんぱく)で覆われた全長1.8メートルのひつぎは歴史的な価値の高さに加え、国際密輸組織によって国外に持ち出されていた文化財としても注目を集めている。

 古代エジプト王朝プトレマイオス朝(前323~前30年)時代の紀元前1世紀にさかのぼるとされるこのひつぎは、ヘリシェフ神の高位聖職者ネジェマンク(Nedjemankh)のために作られたもの。

 ひつぎは、エジプトの長期政権を率いたホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領が民主化運動で失脚した2011年に同国南部のミニヤ(Minya)から持ち出され、アラブ首長国連邦(UAE)とドイツを経由してフランスに運ばれた。

 ニューヨークのメトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)がフランス・パリの美術商からおよそ350万ユーロ(約4億円)で購入し、2017年から展示していた。しかし、国際密輸組織に盗まれたものだと知らされた同館は今年2月、開催していた「ネジェマンク展」を中止した。

 エジプトは近年、2011年のアラブの春以降の政治の混乱で打撃を受けた観光業のてこ入れ策として、国内各地で見つかった考古学的遺物のプロモーションに力を入れている。(c)AFP