■トルコのウイグル人

 貿易業を営むラスルさんはAFPに、2017年5月に父親から受け取った最後の動画を見せてくれた。

 動画の中の父親は、ラスルさんに全てうまくいっていると話している。しかし、神経質そうにあたりを見回すしぐさからは、誰かに監視されているのではと不安に感じている様子も見て取れる。

「(1年後)私は、地元当局が父を『お茶』に招待したと聞かされた。中国ではこれは招待された人になにか重大な問題があるということを意味する」

「話を終えた父は当局の施設を後にした。その後、数百メートル離れた場所で死んでしまった」

 新疆政府と中国外務省はAFPの取材に回答しなかった。

 ラスルさんのような話は、トルコに逃れてきた何万人ものウイグル人にとって珍しい話ではない。トルコは中国の怒りを買う危険を冒してもウイグル人を受け入れている唯一のイスラム教国だ。

 イスタンブール郊外セファキョイ(Sefakoy)にはウイグル人の経営するカフェや店、商店が立ち並ぶ。ここは、ウイグル人が数多く集まる場所となっている。

 新しくオープンした格闘技のジムに集まった多くの人は、文化を守ろうとし、励まし合っていた。ある日の夕方、ジムはあらゆる年齢の子どもでいっぱいになった。多くは親がビジネス上の理由でトルコに移住していた子どもたちで、親たちは中国に帰郷した時に拘束されたため、子どもだけがイスタンブールに取り残されてしまったのだった。

 ジムの開設を手伝った男性は、「ここには親と一緒ではない子どもが多い。親たちは中国で再教育施設に入れられているか、トルコに戻ってこられないかのいずれかだ」と話した。

 ウイグル人の多くは2014~16年に、中央アジアと東南アジアのルートをたどってトルコに逃れてきた。セファキョイのウイグル人が経営するカフェで、AFPが取材した人々は自らの悲惨な脱出の話を語ってくれた。取材した全ての人は中国による弾圧が強化された2017年前後から家族と連絡が取れていないと語った。