■消費者は利便性を歓迎

 香港の調査会社「カウンターポイント(Counterpoint)」のメンメン・チャン(Mengmeng Zhang)氏は顔認証決済について、「主要なモバイル決済企業が後押ししていることもあり、確かに広く普及する可能性はある」と話す。またアリペイは、業者に補助を出したり、消費者に特典をつけたりして、顔認証決済普及に多額の資金を投入しているという。

 さらなるデータ収集機能を搭載した最新技術も登場するなど、データの安全性やプライバシーに対する懸念があるものの、消費者はあまり心配していない様子だ。

 天津(Tianjin)にあるセルフサービス式スーパー「IFuree Go」では、顧客の顔を3Dカメラでスキャンして、顔の縦、横の長さと奥行きを測定し、店を出る際にも同じようにスキャンするシステムを導入している。

 顔認証決済で支払いを終えたある年配の女性は、「とても速く買い物を済ませられるので便利」「従来のスーパーでは、レジに並ばなくてはならないのでとても面倒だった」と話した。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)AIガバナンスセンター(Center for the Governance of AI)のジェフリー・ディン(Jeffrey Ding)氏はこう指摘する。「スマート決済の流行は、企業の目から見て特に二つの目的がある。万引き防止と消費者の嗜好(しこう)データを集め分析しマーケティングに利用するためだ」

 顔認証決済技術は、中国が進めるスマート技術や人工知能(AI)分野の開発にも生かされる。

 米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のアダム・シーガル(Adam Segal)氏は、「(顔認証決済の)大規模な導入は、人の顔や利用目的といった膨大なデータをIT企業に提供する。これは、AI産業の柱の一つとして顔認証技術を発展させるという政府の計画にも一致する」と述べた。(c)AFP/Helen ROXBURGH