【9月29日 AFP】娘を何年にもわたり性的に虐待し続けていた父親が無罪に――。性犯罪に関する旧態依然とした日本の刑法に怒りが広がっている。一片の花を手に性暴力被害者の人権保護を訴える「フラワーデモ(Flower Demo)」が、今月も全国20都市で行われた。

 今年3月、名古屋地裁岡崎支部は、娘を中学2年生の頃から19歳になるまで性的に虐待し、抵抗すると暴力を振るうなどしていたことを認めながら、その父親を無罪とした。刑法では、被害者の抵抗を著しく困難にするほどの明確な暴行または脅迫の存在、あるいは被害者が完全に抵抗不能な状態であったことを証明することを求めているためだ。

 判決の中で岡崎支部は、娘は性交を強要され、そこに「同意は存在せず」、繰り返される虐待によって父親の精神的支配下に置かれていたと認めている。それでも娘が完全に抵抗できない「抗拒不能の状態」にあったとするには疑いが残るとし、準強制性交等罪に問われた父親に無罪判決を下したのだ。

 この事件は現在控訴中だが、多くの人に激しい憤りを感じさせた。同意のない性交はすべてレイプと見なすよう刑法改正を求めるオンライン署名は4万7000筆以上に達し、法相に提出されている。

「またか、と思いましたね」

 そう話すのは、13歳から20歳になるまで自らも父親から性的虐待を受けてきた山本潤(Jun Yamamoto)さん(45)だ。性暴力の被害者ではなく、加害者を擁護するかのような司法をこれまで何度もみてきた。

「司法というのはこういう性被害を犯罪として認めてくれないんだということに、許せないという思いがあります」とAFPの取材に話す。

 看護師でもある山本さんは、性暴力被害者の支援活動をしながら性犯罪に関する刑法改正を訴えている。

「いきなり襲われたり、信頼している人からそのような加害を受けることで驚いて体が固まってしまって、抵抗することもできなかったという人もいます」

「今回のように父親が娘をレイプしても、抵抗できる状況にあったということで無罪になっている。運用の面でも非常に問題は大きいのではないかと思っています」と、山本さんは静かな口調ながら、怒りに声を震わせた。