【9月28日 AFP】26日に死去したフランスのジャック・シラク(Jacques Chirac)元大統領は、相撲をこよなく愛していた。2005年に大阪で相撲観戦を終えて会場を後にする際には、観客が総立ちになり、「シラク!シラク!」と連呼し拍手を送ることもあった。

 シラク氏はイラク戦争に反対したり、欧州統合を支持したりしたカリスマ政治家というよりも、筋金入りの相撲ファンとして多くの日本人の記憶に残ることになるだろう。

 シラク氏は人生で必要なことはすべて相撲で学んだと公言。1998年には「若い頃に(相撲を)始めていたら、(力士に)なれたかもしれない」「身長は十分だ。体重は時間をかければ増やせる」とさえ語っていた。

 日本相撲協会(Japan Sumo Association)の八角(Hakkaku)理事長(元横綱北勝海)はシラク氏の死去を受けて、「突然の訃報に接して驚いている。ご生前のご厚情に深く感謝するとともに、謹んでご冥福をお祈り申し上げます」と哀悼の意を表した。

 NHKの相撲コメンテーターを務めるマーク・シリング(Mark Schilling)氏はAFPに対し、相撲を観戦した大勢の外国要人の中でも、シラク氏の相撲愛は際立っていたと指摘した。

 シリング氏は、「(英国の)チャールズ皇太子(Prince Charles)や故ダイアナ元妃(Princess Diana)をはじめとする有名人が相撲観戦に訪れたが、シラク氏のように実際に興味を持ち、知識もあった方は珍しい」「相撲界に感銘を与えたと思う」と語った。

■愛犬の名は「スモウ」

 数十年来の相撲ファンのシラク氏は1970年代には既に日本を訪れており、最終的な訪日回数は50回を超えた。

 2005年の訪日の際には、「ここを訪れるたびに、新たな喜びがある」とコメント。この時は5年ぶりの訪日で、来られなかった期間は「耐えがたい」ものだったとも述べた。

 大統領在職中には、相撲を愛するあまりフランスの放送局と話をつけ、放映前の相撲中継の録画を入手していたほどだった。さらに一日の取組が終わり次第、結果を報告するのが在日フランス大使館の日課ともなっていた。

 シラク氏は1986年にはパリ市長、1995年にはフランス大統領として2度の大相撲パリ公演の実現に尽力した。その相撲愛はフランス共和国大統領杯(シラク杯)の創設に至り、2000年から大統領を退任した2007年まで幕内優勝力士に授与された。

 一方、後任のニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)元大統領はシラク氏とは大きく異なった見方を示し、「どうしたらポニーテールをなでつけた太った男同士の戦いに夢中になれるんだ? 相撲は断じて知識人向けのスポーツではない」とこきおろしたとされる。

 シラク氏の相撲愛は筋金入りで、愛犬に「スモウ」と名付けるほどだった。しかし繰り返しかまれたため、後に手放さざるを得なくなった。

 ある日本のツイッター(Twitter)ユーザーは、相撲を愛したシラク大統領が今日の日仏友好の礎を築いてくれたと感謝の気持ちを投稿した。(c)AFP/Kyoko HASEGAWA / Sara HUSSEIN