【9月28日 AFP】メキシコで学生43人が失踪した事件の発生から丸5年を迎え、政府は26日、前政権時代の「メキシコ国家の工作員ら」による犯罪事件として再捜査の実施を表明するとともに、新たな情報に懸賞金を出すことを発表した。

 事件は2014年9月26日夜に発生。抗議行動に参加しようとしていたゲレロ(Guerrero)州の学生グループが汚職警官に拘束された後、麻薬カルテルに引き渡され、うち43人が姿を消した。この事件は国際社会からの非難を呼び、エンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)前政権の汚点となっただけでなく、5年後の今もメキシコに影を落としている。

 首都メキシコ市中心部のソカロ(zocalo)広場に向かう道筋では26日、失踪者の親族が主導するデモ行進があり、学生を中心に数千人が「正義を!」と声を上げた。後方では、フードをかぶった約100人が店舗の窓を割り、飲食店に放火しようとする事態が発生。火は他のデモ参加者によって消し止められた。

 失踪事件をめぐっては、当局による不手際と汚職があったとされ、捜査は難航。今月に入り、拷問による自白の強要をはじめとする不正行為が認められた結果、主犯格とみられる容疑者を含む77人が釈放された。

 昨年12月に就任したアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領は、真相究明を担う委員会を設置。さらに、新政権の検察長官は再捜査を「ほぼゼロから」行う計画を発表した。

 ペニャニエト前大統領は過去、「メキシコ国家の工作員ら」の犯行であることを強く否定したが、現政権のアレハンドロ・エンシナス(Alejandro Encinas)内務次官(人権担当)は同じ言葉を使い、事件を「メキシコ国家の工作員ら」による犯罪として捜査すると表明した。

 政府は新たな手掛かりに約7万5000ドル(約810万円)の懸賞金を出すと発表。さらに、事件当時の地元警察幹部で主犯格とみられるアレハンドロ・テネスカルコ(Alejandro Tenescalco)容疑者の居場所に関する情報には、50万ドル(約5400万円)を支払うとしている。(c)AFP/Natalia CANO