【9月26日 AFP】トランスジェンダー(性別越境者)の英男性が子どもを出産した後、出生証明書に「母親」と記載されることを拒んで起こした訴訟で、英高等法院は25日、「父親」または「親」の表記を希望する男性の要求を退ける判断を下した。

 英紙ガーディアン(The Guardian)でマルチメディア専門記者として働くフレディ・マコネル(Freddy McConnell)さん(32)は、女性として生まれたが、数年前から男性として暮らしている。2013年にホルモン治療を始め、乳房切除手術も受けたが、妊娠・出産は可能な状態で、治療を中断して17年に妊娠。翌18年に出産したのを機に、正式に男性となる法的手続きを取った。

 しかし、高等法院家庭部のアンドルー・マクファーレン(Andrew McFarlane)判事は、「個人のジェンダー(社会的性別)と、保護者としての法的地位には、大きな違いがある」として、我が子の出生証明書に「父親」か「親」と記載されることを望むマコネルさんの要求を却下した。

 マクファーレン判事は「従来、『母親』であることは常に女性であることと直結していた。だが、『母親』という立場は、身体的・生物学的な妊娠・出産のプロセスを経た人物に与えられるものだ」と説明。「現在、法律上は男性となっている個人が妊娠・出産することは、医学的にも法的にも可能」であり、「その人物のジェンダーが『男性』であっても、親としての法的立場は、子どもを産むという生物学的な役割に基づき『母親』となる」との判断を示した。

 弁護団によると、マコネルさんが勝訴していれば、子どもはイングランドとウェールズで初めて法的な母親のいない事例となっていた。

 マコネルさんは、「これが現状を維持するための判決なら、私のように子どもを産んだり、これから産みたいと思っていたりするトランスジェンダーの人々にいったいどんな意味を持つか、本当に心配だ」とコメント。上訴するかどうか検討しているという。(c)AFP