【9月21日 AFP】ドイツの極圏・海洋調査機関「アルフレート・ウェゲナー研究所(Alfred Wegener Institute)」が所有する大型砕氷船「ポーラーシュテルン(Polarstern)」が20日、気候変動に関する調査研究を行うために19か国の科学者から成る調査団を乗せて北極に出発した。

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 この調査は「MOSAiC」(北極気候の研究を目的とする学際的漂流観察)と銘打ち行われるもので、北極への遠征調査としては史上最大。予算は1億4000万ユーロ(約170億円)で、1年かけて大気、海洋、海氷、生態系や、自然の作用について調べ、気候変動が北極や世界全体に与える影響の解明を目指す。

 船はノルウェーのトロムセ(Tromso)を出港し、極点周辺の巨大な氷山に係留した後、1年近く北極圏の中心部を漂流する計画。冬には厚さ1.5メートル以上の氷に囲まれる。補給と乗組員の交代は、ロシア、中国、スウェーデンの砕氷船4隻から成る船団と、飛行機、ヘリコプターで行う。ポーラーシュテルンには常時100人前後が滞在し、氷に囲まれた後もこの船が調査団全員の生活拠点となる。

 調査団を率いる大気学者マルクス・レックス(Markus Rex)氏はMOSAiCのウェブサイトで、「北極は、この数十年で世界のどの地域よりも急速に温暖化が進んできた」と述べ、「今年初めには北極中心部の気温がドイツを上回るという極端なケースもあった」と指摘している。

 レックス氏は「北極は地球温暖化の中心地のような場所であると同時に、ほとんど分かっていない地域でもある」とし、「北極について信頼に足る予測をしなければ、気候について正確な見通しは立てられない」と説明した。(c)AFP/Tom BARFIELD