【9月20日 AFP】キューバの首都ハバナ駐在の外交官ら数十人が謎の脳損傷を負った問題で、蚊を駆除するくん煙剤に含まれる神経毒が原因だった可能性があるとするカナダの研究結果が19日、明らかになった。カナダや米国の外交官と家族を襲った不可解な症状については、「超音波兵器」による攻撃ではないかとの見方も出ていた。

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 外交官らが最初に症状を訴えたのは2016年。めまいや倦怠(けんたい)感、頭痛、聴覚・視覚の合併症などで、のちに「ハバナ・シンドローム」として知られるようになった。カナダ・米当局は当初、何らかの「音響兵器」を使った攻撃を疑い、米国とキューバの外交関係は悪化。一方、カナダ当局はその後、音響攻撃の「可能性は考えにくい」と結論付けた。

 カナダ・ハリファックス(Halifax)にある研究機関「脳修復センター(Brain Repair Centre)」の研究チームは、ノバスコシア州保健局(Nova Scotia Health Authority)、ダルハウジー大学(Dalhousie University)と共同で、記憶、集中力、眠りのサイクルをつかさどる脳の各部位がどのように損傷を受けるかを調べ、「神経毒への暴露」が症状を引き起こした可能性があるとの結論を導き出した。

「音響兵器とは何の関係もなかった」「くん煙タイプの蚊の駆除剤に使われる神経剤が原因の可能性が高い」との研究概要を、公共放送ラジオ・カナダ(Radio-Canada)のオンラインニュース誌「オンケート(Enquete)」は報じている。

 この研究には26人が参加。このうちキューバに住んだことのない人々を対象グループとし、血液検査と脳MRI検査を行った。

 研究はキューバで被害に遭ったカナダ人15人について、「心身が徐々に消耗する症状」を訴えていたが、米国人らが報告した大きな耳鳴りや震えなどの症状はみられなかったと指摘。カナダ人外交官らは、市販の殺虫剤に含まれるごく少量の神経遮断剤に長期にわたってさらされていた可能性が高いと結論付けた。

 キューバでは殺虫剤の散布が定期的に行われており、2016年にはジカウイルス感染症(ジカ熱)の流行対策として、ウイルスを媒介する蚊の駆除キャンペーンが展開されている。ラジオ・カナダは、大使館の記録によれば外交施設や官舎でも殺虫剤がまかれていたと伝えた。(c)AFP