【9月21日 AFP】ラグビー元ニュージーランド代表のピタ・アラティニ(Pita Alatini)氏は、岩手県釜石市が2011年の東日本大震災による悲劇を乗り越えて、W杯日本大会(Rugby World Cup 2019)の試合会場となることを喜んでいる。

 1万5000人を超える死者を出した震災発生時、ジャパンラグビートップチャレンジリーグの釜石シーウェイブス(Kamaishi Seawaves RFC)でプレーしていたアラティニ氏は現在、出身国であるトンガ代表のコーチとして再び来日し、22日にイングランドとのW杯初戦を控えている。

 当時のことを鮮明に覚えているという43歳のアラティニ氏は、試合が行われる札幌市で、「あの日まで人々が避難所に走る姿を見たことはなかった」「すると津波がくると言われた。私がプレーしていたクラブの選手1人が両親を亡くした。私は1か月ほどとどまり、必要とされるならば滞在を延ばすつもりでいた」と報道陣に明かした。

 犠牲者の追悼と未来へのレガシーをつくり出すために新しく建設された釜石鵜住居復興スタジアム(Kamaishi Unosumai Memorial Stadium)では、25日にプールDのフィジー対ウルグアイ、来月13日にプールBのナミビア対カナダの試合が行われることになっている。

「2年前にドキュメンタリーの撮影で再び(釜石市を)訪れたときは、まだスタジアムが建設中だった」「もちろん今では完成し、(W杯で)2試合を開催することは、町にとって大きな意味がある」と話したアラティニ氏は、スタジアムのこけら落としとなる来週の試合にトンガが出場しないことだけが残念だという。

「彼ら(フィジーとウルグアイ)がとてもうらやましい」「トンガがあそこで試合をしていれば最高だったのに。だけど、町の人々のことはうれしく思う」「彼らは本当にたくさんのことを乗り越え、今は町中がラグビーに熱狂している」 (c)AFP