【9月19日 AFP】(更新、写真追加)2011年に起きた東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人に対し、東京地裁は19日、無罪判決を言い渡した。

 検察側は勝俣恒久(Tsunehisa Katsumata)元会長(79)、武黒一郎(Ichiro Takekuro)元副社長(73)、武藤栄(Sakae Muto)元副社長(69)の3被告に対し、禁錮5年を求刑していた。

 全被告に無罪が言い渡されると、傍聴席にいた女性から「信じられない」との声が漏れた。また裁判所前では、福島県から来たという人々を含め公判開始前から集まっていた数十人がショックをあらわにした。ある女性は抗議する人々を前にマイクで、完全な不当判決であり受け入れられないと訴えた。近くにいた男性は「控訴だ」と叫んだ

 福島第1原発の事故は、旧ソ連時代の1986年に現在のウクライナで発生したチェルノブイリ(Chernobyl)原子力発電所の爆発事故以来、最悪の規模となったが、刑事裁判はこの裁判だけで、起訴されたのは3人のみ。

 福島第1原発事故で亡くなったとして公式に記録された人はいないが、事故のきっかけとなった地震による津波では約1万8500人が死亡または行方不明になっている。

 3被告は、原発事故を受けて避難を余儀なくされた病院の入院患者40人以上を死亡させたとして、業務上過失致死傷罪に問われていた。裁判では、巨大津波の可能性を予見できたかどうかが争点となったが、旧経営陣側は当時得られたデータは信頼性が低かったと主張していた。

 東京地検は、嫌疑不十分で有罪判決に導く可能性が低いとして2度不起訴としたが、市民から構成される検察審査会が2015年に3人の起訴を議決し、強制起訴に至った。(c)AFP