【9月19日 東方新報】中国人の「国民食」である豚肉の価格高騰が続いている。アフリカ豚コレラの拡大と米国からの貿易抗争というダブルパンチに見舞われ、中国政府は懸命に対策を打ち出している。

 豚肉は中国の食肉消費量の6割を占め、中国語で「肉」と言えば豚肉を意味する。政府の8月の消費者物価指数によると、豚肉の価格は前年同月比で47%も上昇した。都市部では500グラム25元(約380円)前後で、地域によっては1年間で倍になった。「これではギョーザも作れない」という庶民の嘆き節が各地から聞こえてくる。

 政府は2014年ごろから、環境保護政策を推し進めるため、管理が行き届いていない小規模な畜産農家の閉鎖を促進し、林業などへの転業を促していた。しかし、昨年8月からアフリカ豚コレラが中国全土に拡大。豚肉の供給が需要に追いつかなくなった。さらに昨年から米国との貿易摩擦が激化。米国への対抗措置として、豚肉のエサになる米国産大豆に高い関税を課したことで、豚肉価格が上昇した。

 こうした状況で、政府は農家、消費者、米国に対し、対策を打ち出している。

 生態環境省は5日、各地の地方政府に「環境保護のため養豚事業を閉鎖するのでなく、一定の経過措置を講じて温存するように」と異例の通達を出し、養豚場への補助金支給も決めた。

 消費者に対しては、政府は11日、「豚肉の供給を安定化し、不当な値上げを厳しく監視する」と強調。豚肉の購入費用の一部補塡(ほてん)、豚肉の緊急備蓄放出もしている。一方で、鶏肉消費を促進する。当面の措置として、豚肉の購入に身分証明書の提示を求める事実上の配給制を行っている地域もある。

 13日の国営新華社(Xinhua)通信によると、中国政府は、中国企業が米国から新たに購入する大豆や豚肉などの農産物について、これまで発動した追加関税の適用から除外すると決定した。米国との貿易協議を進めるため一定の譲歩を示したと同時に、豚肉価格の高騰を防ぐ目的がある。

「民者以食為天(訳:民は食をもって天となす)」(漢書)と古くから言うように、人民にとって最も大切なことは食べることだ。

 10月1日には、中国建国70周年が控えている。祝賀ムードで当日を迎えるためにも、中国政府は庶民の「食」の確保に躍起になっている。(c)東方新報/AFPBB News