【9月17日 AFP】宇宙が膨張していることは、数十年前から科学的に明らかにされている。だが、ここ数年の研究により宇宙の膨張速度の推算が揺らいでおり、宇宙の理論をめぐる難しい問題が持ち上がっている。

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「ハッブル定数(Hubble constant)」として知られる宇宙の膨張率は、宇宙の起源に関する研究の中心となっている。

 二つの研究チームが1998年、遠い銀河ほど速く遠ざかる「宇宙の膨張」と呼ばれる現象が加速していることを発見した。また、宇宙は謎の「暗黒エネルギー」で満たされており、このエネルギーが140億年間にわたる加速を引き起こしていることも明らかにした。この研究は2011年、ノーベル物理学賞(Nobel Prize in Physics)を受賞している。

 銀河が遠ざかる速度をキロメートル毎秒とすると、ハッブル定数の測定値はキロメートル毎秒毎メガパーセク(1メガパーセクは約300万光年)という単位で表される。さまざまな測定手法から、ハッブル定数は67.4または73とされている。

 独マックス・プランク天体物理学研究所(Max Planck Institute for Astrophysics)などの研究者らは今回、宇宙の膨張率を測定する新たな手法を開発したと明らかにした。これにより測定したハッブル定数は82.4で、過去の推算値を上回っている。だが、今回の測定値に10パーセントの誤差があると論文は認めているが、これは測定値が74~90の範囲にあることを意味する。

 科学者によれば、さまざまな手法による差異は計算ミスではなく、ビッグバン(Big Bang)理論が宇宙をどのように説明するかについての解釈の「不一致」の表れの可能性があるという。ビッグバン理論では、宇宙は激変的な爆発で始まって以来、膨張を続けているとされている。

 論文の共同執筆者で、マックス・プランク天体物理学研究所の宇宙論研究者イン・ジー(Inh Jee)氏は「このような不一致が存在するのなら、初期宇宙では未知の物理学が作用しているということであり、それについて研究を行う必要がある」と指摘した。「今回の研究では、測定結果間の差異が存在するのかどうかを検証する新たな方法の考案を目指した」と、ジー氏はAFPに語った。

 さまざまな測定法により、300万光年離れた銀河間の距離が毎秒67キロか73キロ、もしくは82キロ広がっているという結果が得られている。

 最新の推算結果は、大型銀河の周囲で光がどのように曲げられるかに基づいている。

 今回の研究は誤差の範囲が大きいため、ハッブル定数を微調整できる可能性は低いものの、その測定手法は宇宙論的理論に根本的な問題があるかどうかをめぐる議論の材料に加えられると、ジー氏は話している。

 研究結果は12日、米科学誌サイエンス(Science)で発表された。(c)AFP/Ivan Couronne