【9月15日 AFP】英イングランドにあるブレナム宮殿(Blenheim Palace)で14日未明、18金で制作された便器が盗まれる事件が起きた。警察が明らかにした。盗まれた際に配管が壊され、世界的に有名な宮殿の内部が水浸しになった。

「アメリカ(America)」と名付けられているこの便器は、イタリア人アーティスト、マウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan)氏の作品で、約100万ポンド(約1億3500万円)の価値があるとされている。便器として実際に使用することもできる。

 この事件に関与した疑いで66歳の男が逮捕された。

 ブレナム宮殿は、オックスフォード(Oxford)の近くにあり、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)にも登録されている。この便器は、ブレナム宮殿で12日に開幕したカテラン氏の展示会の目玉作品だった。来訪者は、予約すればこの便器を利用することができたが、待ち時間を短くするため、1回の利用時間は3分に制限されていた。

 米ニューヨークのグッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)で展示されていた年には、10万人以上がこの便器を使用した。

 警察は「犯人らは夜間に宮殿に押し入り、午前4時50分(日本時間同日午後0時50分)ごろ逃走した。この事件による負傷者はいなかった」と発表。少なくとも2台の車が犯行に使われたとの見方を示し、「便器は配管で建物と接続されていたため、配管から外されたことで深刻な被害があり、水漏れが発生した」と明かした。

 ブレナム宮殿は第2次世界大戦(World War II)当時の英首相ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)が生まれた場所としても知られている。ブレナム美術財団(Blenheim Art Foundation)を設立したエドワード・スペンサー・チャーチル(Edward Spencer-Churchill)卿は先月、英紙タイムズ(The Times)に次のように語り、便器の警備については心配していないと話していた。

「第一に配管でつながれているし、第二に直前に誰がその便器を使ったのか、またその人が何を食べていたのか、盗もうとする人には分からないのだから、特に便器を警備することは考えていない」「私は裕福な家に生まれたが、金の便器で用を足したことはまだない。そうすることを楽しみにしている」

 カテラン氏は、この便器について「99%の人のための1%の芸術だ」と語り、貧富の格差をテーマにした作品だと説明していた。展示会は、14日は中止されたが15日には再開される。カテラン氏の展示会は、10月27日まで開かれる。(c)AFP/Alice RITCHIE