【9月14日 AFP】仏ノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)に所蔵されていた貴重な巨大タペストリーが、4月の大火災の消火活動で大量の水を吸ったことによる大きな損傷を免れたことが分かった。

 タペストリーは1838年に当時の国王ルイ・フィリップ1世(Louis Philippe)の下で完成した。ウール製で、大きさは縦25メートル、横7.35メートル。フランスの画家、ジャックルイ・ドラアメデ(Jacques-Louis de la Hamayde)の構想に基づき、「豊饒(ほうじょう)の角」(動物の角の形をした装飾的な器、豊かさの象徴)や花かんむりが色彩豊かに表現されている。

 ノートルダム大聖堂では4月15日、大きな火災が発生し、屋根と尖塔(せんとう)が崩れ落ちたが、タペストリーは2つに分けて筒の中に保管されていたため、屋根から溶け落ちる鉛から守られた。

 しかし、タペストリーは消火活動に使われた水を大量に吸収。火災の数日後に焼け跡から運び出され、国有動産管理局(モビリエ・ナショナル、Mobilier National)に引き渡された時点で、重さは通常の1トンから3トンへと増加していた。

 同局のエルビ・ルムアン(Herve Lemoine)局長は今週、AFPの取材に対し、タペストリーを巻いたままにすれば「バクテリアの巣窟」になり、すぐに腐り始める恐れがあったと説明。「広げて、大きな風洞で乾かしてから、凍らせてカビの発生を抑える必要があった」と述べた。

 今はまだ、湿気の跡などの汚れや、多少の虫食いや破れが見られるが、鮮やかな図柄は十分に鑑賞できる。技術者らがこれから数か月がかりで修復を行う。

 タペストリーは、1980年に当時のローマ法王、ヨハネ・パウロ2世(John Paul II)が大聖堂を訪れた際など、特別な機会にしか公開されてこなかったが、修復作業に当たる国有動産管理局は今月21、22両日、「欧州文化遺産の日(European Heritage Days)」に合わせて施設の一般公開を行う。これは、タペストリーが公の目に触れる珍しい機会となる。(c)AFP/Jean-Louis DE LA VAISSIERE