■がん発症率と有害粉じん暴露に明確な相関関係

 2001年9月11日の事件では、ダイオキシン、アスベストなど発がん性物質を含む大量の化学物質が前例のない規模で放出された。消防士ら初期対応者や何か月もがれきの除去にあたったボランティアらが最初に影響を受けた。複数の研究が、これらの人々の間でがんや心臓疾患リスクが増したことを示している。

 連邦政府による生存者支援プログラム「世界貿易センター健康プログラム」では、約1万人のこうした初期対応者やボランティアの人々ががんと診断されている。

 そして、今年6月末時点の支援プログラム対象者のうち、初期対応者ではない人の数は約2万1000人だった。これは2016年6月時点の約2倍となっており、このうち約4000人ががん患者で、中でも前立腺がん、乳がん、皮膚がんが多かった。

 専門家は、全てのがん患者の原因を突き止めることは不可能だとしながらも、がん発症率と有害粉じん暴露には明確な相関関係があるとしている。

 ニューヨーク市消防局の医療部門責任者デビッド・プレザント(David Prezant)氏は、有害粉じんにさらされた人はさらされなかった人に比べ、がん発症率が「10~30パーセント高い」ことが複数の研究で分かっているとAFPに述べた。

 そして、この発症率の増加は、有害粉じんにさらされた人が年をとることでさらに高まると考えられている。プレザント氏によると、がんリスクは年齢と共に高まることが分かっており、また肺がんなど一部のがんでは発症までに20~30年かかるとされている。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領はこれを受け7月、犠牲者が補償金を請求できる期限を2020年12月から2090年まで延長している。(c)AFP/Catherine TRIOMPHE