【9月10日 時事通信社】英下院は10日、来月末の欧州連合(EU)離脱前に総選挙を実施するというジョンソン首相の提案を否決した。英国の首相に議会解散権はなく、「合意なき離脱」阻止を最優先に掲げる野党各党が反対・棄権に回ったためだ。ただ、野党は「合意なし」のリスクさえ遠のけば、有権者の判断を仰ぐことには前向きで、年内にEU離脱を争点とした総選挙が行われる公算が大きい。混迷はしばらく続きそうだ。

 「英国民が選挙で意見を表明することを否定した」。首相は10日未明の下院でこう述べ、野党の姿勢を強く非難した。与党・保守党の造反議員を追放処分にして下院の過半数を失った首相にとっては、総選挙に打って出て政権基盤を立て直す以外に活路はない。

 一方の野党は、「何があろうと10月末に離脱する」と繰り返す首相に、EUへの離脱延期要請を義務付ける作戦に成功。強気一辺倒の首相が「公約」に反して頭を下げ、離脱の先延ばしをEUに申し入れれば、支持者の幻滅は大きい。

 首相がそうした事態を回避するには、10月中旬までにEUと離脱合意案をまとめ、懸案の英領北アイルランド国境問題を解決する必要がある。ただ、ジョンソン政権は7月の発足以来、肝心の対EU交渉に手を付けないまま。残り1カ月余りで目覚ましい進展は期待しにくい。

 野党は、10月末の離脱期限が来年1月末に延期され、首相の求心力が低下した状態で総選挙に臨む構えだ。政権交代が実現すれば、国民投票を再び実施して離脱か残留かを問う方針だが、EU残留派と穏健離脱派の寄り合い所帯だけに、結束をいつまで保てるかはおぼつかない。

 世論調査によると、有権者の約4割は「合意なき離脱」を支持している。元残留派すら「経済的な悪影響を被ってもいい。早く問題を片付けてほしい」(30代女性)といら立ちを隠さない。首相が「野党の狙いは離脱中止だ」と攻勢を強め、離脱票や浮動票の取りまとめに成功すれば、総選挙に勝利し、今度こそ「合意なき離脱」に踏み切る可能性もある。(c)時事通信社