【9月10日 AFP】人工知能(AI)が生み出す交響曲は、クラシック音楽の偉大な作曲家が手掛けた曲に肩を並べられるだろうか。

 オーストリア北部リンツ(Linz)で開催された科学とアートとテクノロジーの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル(Ars Electronica Festival)」で6日、そのような問いを投げ掛けるユニークな演奏会が行われた。

 オーケストラはまず、グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)による未完の交響曲第10番を演奏し、そのまますぐにAIソフトが作曲した6分間の「マーラー風」楽曲を続けて演奏した。

 プロジェクトの開発者は、2曲の違いは明らかに分かるが、曲の変化に気付かなかった聴衆もいたと話す。

 この画期的な作曲に携わったのは、AIの研究者でアルスエレクトロニカ・フェスティバル系列の研究所、アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ(Ars Electronia Futurelab)に作家として所属するアリ・ニックラング(Ali Nikrang)氏だ。作曲には、オープンソースのAIソフト「MuseNet」を用いた。

 AFPの取材に応じたニックラング氏はMuseNetで作った曲について、「それらしい音楽に聞こえて情緒的でもあるが、マーラーに詳しい人ならすぐにこれがマーラーの曲ではないと気付く」と話し、マーラーの曲に特徴的な「ハーモニーを生かした表現」はそれほど含まれていないと説明した。

 ニックラング氏によれば、AIは「過去にマーラーが私たちに残してくれたデータ」を基に学習するため、マーラー風の楽曲を作り出せるものの、マーラーの「コンセプト」や楽曲全体のテーマ自体を考え出すことはまだできないという。

 MuseNetでの作曲は、ソフトがマーラーの交響曲第10番の最初の10音を処理し、4パターンの節を提示。そのうちの一つをニックラング氏が選択すると、そこからさらに4パターンをAIが提示するといった作業が繰り返された。

「提案されるものはどれもかなり良かった…少なくとも5か月前の技術的なレベルを考えると、AIだからというわけではない」とニックラング氏は語り、MuseNetの質が飛躍的に向上したと付け加えた。