【9月14日 AFP】「ウォンおじいさん」はつえを頭上にかざし、催涙弾の発射をやめるよう機動隊に訴えた──。85歳のウォンさんは、香港民主派デモの最前線でデモ隊を守っているのだ。

 高齢のウォンさんだが、定期的に香港デモの衝突現場に姿を現し、機動隊とデモ隊の間に率先して身を置く。今や日常となった衝突を鎮めたいとの思いからの行動だ。

「若者が殺されるぐらいなら、年寄りが死んだ方がいい」と、繁華街の銅鑼湾(Causeway Bay)で起きた一連の衝突の合間にAFPの取材に答えたウォンさん。頭からガスマスクをぶら下げながら、「私はもう年だが、子どもたちは香港の未来だ」と語った。

 ここ3か月にわたって行われている大規模デモは、時に暴力的な様相も呈してきた。参加するのは若者が圧倒的に多く、一部調査によると、参加者の半数は20〜30代で、77パーセントが大卒だという。

 ウォンさんと仲間の「チャンおじいさん」(73)はデモに参加する高齢者の中でも特に積極的だ。2人が所属しているのは、「守護孩子(Protect the Children)」と呼ばれるグループで、そのメンバーの大部分を高齢者とボランティアが占めている。ほぼ毎週末、警察とデモ隊の間に入り仲裁を試みるが、警察が突撃すると分かれば、デモ隊のために時間稼ぎをすることもある。

■平和的な方法

 銅鑼湾で催涙弾が再び飛び交い始めると、チャンさんはウォンさんの手をぎゅっと握った。「死ぬなら一緒だ」と叫びながら、衝突の最中に戻らないようウォンさんを引き留めたのだ。チェンさんはいつも、ヘルメットの代わりにスローガンが書かれた目を引く赤い帽子をかぶっている。

 守護孩子の主な目的は若者の保護だ。しかしウォンさんらは、デモ隊に対しても警察を挑発しないよう強く求めている。「香港の本質的価値は平和的な方法で守るべきだ」

 一連のデモで、これまでに12歳の子どもから70代の男性まで1100人以上が逮捕されている。多くは暴動の罪に問われており、10年の禁錮刑が科される可能性もあるという。