【9月7日 AFP】パキスタンの裁判所は、結婚式を楽しむ姿が動画に映っていた女性らを殺害したとして、その父および兄弟の男3人に終身刑を言い渡した。今回の事件はここ数年の間、いわゆる「名誉殺人」の悪名高い事例として注目を浴びていた。

 首都イスラマバードから175キロ北方の山岳地帯に位置するコヒスタン(Kohistan)地方で、2012年に持ち上がったこの事件は、結婚式を撮影した動画に登場した招待客の男女を地元の宗教指導者が殺害するよう命じていたことで、以来世界中から注目を浴びてきた。

 同地方の検察官は5日、AFPの取材に対し、映像に登場した女性のうち3人が殺害されたとし、「裁判所は5日、男3人に対して殺人の罪で終身刑を言い渡した。他の5人は無罪となった」と明かした。この検察官によると、有罪となった3人は、殺害された女性1人の兄弟と、他の2人の女性らの父親2人だという。

 被告の弁護人は、上訴する意向を明らかにしている。

 2012年に撮影された問題の映像では、女性たちが男性の踊りに合わせて手をたたいている様子が捉えられている。

 この男女らは、結婚式では男女を隔離すべきとする厳格な慣習の核心をなす「名誉」という家父長制的な考えに逆らい、部屋の中で一緒に滞在していたとされている。ただ、映像では男女が一緒にいる様子は映っていなかった。

 さらにこの事件では、映像に登場していた女性の親族であるアフザル・コヒスタニ(Afzal Kohistani)氏が女性たちは殺されたと動画で主張。メディアや司法システムが取り上げる前に事件を明るみに出すという、異例の展開をたどった。

 だがコヒスタニ氏は今年3月、同国北西部のアボタバード(Abbottabad)で射殺され、「名誉殺人」事件で法の裁きを求めた極めて希少な事例として、同氏を称賛していた活動家らを憤激させていた。

 名誉殺人では、結婚のプロポーズを断ったり、「誤った」男性と結婚したり、駆け落ちをする友人を助けたりした女性たちは家族に「恥」をかかせたとして、銃撃されたり、刺されたり、石打ちにされたり、火を付けられたり、窒息させられたりする。

 男性も犠牲になることがあるものの、比較的珍しい。(c)AFP