【9月8日 東方新報】中国ロボット産業連盟の曲道奎(Qu Daoqui)理事長によると、 昨年の国産ブランドの産業用ロボットの国内シェアは32.2%、前年比で16.2%増となった。市場全体が縮小傾向にあるなか、中国産ロボットの健闘が目立つという。外資ブランドの工業ロボットの中国における売り上げは前年同期比10.98%減となった。市場全体としては2018年には前年比3.75%減少していた。

【写真特集】パトロールから卓球まで、多種多様な中国のロボット

「中国ロボット産業発展報告2019」によると、中国のロボット市場規模は約86億8000万ドル(約9280億円)。2014年から2019年までの平均成長率は20.9%だった。製造業大国・中国の産業用ロボット市場は、全世界の3分の1を占め、世界最大だ。

 ただ、中国産業用ロボット市場において3分の2以上が外資ブランドに占められており、ロボット産業の比較的後発国の中国としては、国内市場をいかに攻略するかを課題としてきた。

 統計によれば、2013年は中国国産ブランドの産業用ロボット市場のシェアは25.9%、2016年には32.7%まで上昇したが、2017年には26.7%にまで下がり、2018年に32.2%に回復した。外資ブランドがハイエンド寄りの市場に照準を当てているのに対し、中国産ブランドはローエンド寄りの市場をターゲットにしてきたが、このハイエンド市場への進出がなかなか難しい。中国の産業用ロボット市場は、自動車、スマートフォンなどの製造業現場だけで7割の需要を占める。これらの製造現場で求められる工業ロボットは精密な作業ができるハイエンド市場。利潤も、単純作業の製造現場用のローエンド市場よりかなり高い。「特に自動車産業で使われる産業ロボットが、中国にとっては弱いところだ」と曲理事長は指摘する。

 背景には、二つの要因がある。自動車産業に必要とされる工業用ロボットの高い品質と信頼性の要求に、まだ中国国産ロボットは対応できるレベルに達していないということだ。もう一つは、自動車産業は長期にわたって外資ブランドが独占しており、その長期間の業績の累積とブランド効果の壁が、新興の中国国産ブランドの進出を阻んでいることだ。

 だが、そろそろ、そういう局面もかわりつつある。報告によれば、産業用ロボットの鍵となる核心技術であるサービスロボットのコントローラー部の人工知能(AI)技術の国産化は第1ステージをクリアしているという。

 中国の医療機器メーカーである中瑞福寧(Zhongrui Funing)が大会で展示していた眼科手術ロボはその一例だ。眼底黄斑などの眼科疾患を医師によるリモートコントロールで可能とするこのロボットは、すでに動物実験を終わらせ、来年から臨床試験にはいる。

 こうした技術革新には当然、海外との協力はある。同社は2013年にスイスに実験室をつくり、介護ロボットの開発も開始。2016年にはスウェーデンに支社をつくり、研究開発チームを発足している中瑞福寧の劉倩(Liu Qian)会長は「国内のロボット領域はやはり後発で、核心技術の開発能力は弱い。十数年から数十年の遅れをとっている分野もある。だからこそ、胸襟を開いて海外と協力していくことが重要」と言う。そこから人材を育て、いかに核心技術部分を「自力更生」していくかが鍵となる。「中瑞福寧の核心技術開発の3分の2は現在、国外で行っているというが、2年後には国内開発が3分の2になる」と劉会長は語る。

 清華大学(Tsinghua University)AI研究学院AI研究センターの孫富春(Sun Fuchun)主任は「ハイエンドロボットの研究開発市場に、すでに中国人、特に若い中国人技術者が増えてきている」といい、「時間の推移とともに産業用ロボットのハイエンド市場を中国ブランドが占めていくことになる」と期待感を示している。(c)東方新報/AFPBB News