【9月6日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米政権の中東和平構想が滞る中、同構想の作成で主要な役割を果たしたジェイソン・グリーンブラット(Jason Greenblatt)外交交渉特別代表が5日、辞任すると発表した。

 グリーンブラット氏の辞任により、公表が大きく遅れている新たな中東和平構想にさらなる疑問符が付くことになる。同構想は米政権が「世紀の機会」とうたっているものの、公表前の段階でパレスチナ側から拒絶されている。

 グリーンブラット氏は、トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)米大統領上級顧問と共に、2年半前から新構想に取り組んできた。同氏は辞任を発表した声明で、自身の構想は「平和に向けたビジョン」だと述べた。またクシュナー上級顧問は、グリーンブラット氏は「地域全体を通じ、すべての指導者に信頼、尊敬されている」と称賛した。

 ある高官は、グリーンブラット氏はより多くの時間を家族と過ごすことになるが、「大統領の信頼を得て」おり、円満に政権を去ると述べた。

 だが、トランプ大統領が公約した中東和平への取り組みの改革が難航しているとの印象は、グリーンブラット氏の退任により強まるばかりだ。

 グリーンブラット氏は先週、中東和平構想の公表は今月17日に行われるイスラエル総選挙以降になると表明。同構想が新たな抵抗に遭っているとの見方が出ていた。この選挙では、トランプ大統領と同盟関係にある同国のベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相が政権を維持できるかが決まる。

 一方、バラク・オバマ(Barack Obama)前米政権で中東での交渉を担当したイーラン・ゴールデンバーグ(Ilan Goldenberg)氏は、中東和平構想が公表されない本当の理由は、2020年米大統領選挙かもしれないと指摘。ツイッター(Twitter)に「クシュナーの中東和平構想が日の目を見るとしても、2020年11月より後だ(私は公表されないことに賭けるが)」と投稿した。

 パレスチナ自治政府高官のハナン・アシュラウィ(Hanan Ashrawi)氏はグリーンブラット氏を批判し、「彼を公正または中立だと見なした者は一人もいない。彼は平和のためではなく、イスラエルの侵害行為すべてを正当化するために全力を尽くしていた」と述べた。(c)AFP/Sebastian Smith