【9月4日 AFP】高所得国において、がんが心疾患を抜いて死亡原因のトップとなったことが、3日に英医学誌ランセット(The Lancet)に発表された二つの研究論文によって明らかになった。論文は10年に及ぶ世界規模の健康動向調査に基づいている。

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 全体では中年期の死亡原因のトップは依然として心疾患で、全死亡者の40%以上を占めていた。2017年の心疾患による死亡数は約1770万人に上るとみられる。

 カナダのケベック(Quebec)州にあるラバル大学(Laval University)のジル・ダジュネ(Gilles Dagenais)名誉教授は「高所得国では、心疾患はもはや死亡原因トップではなくなった。世界は種々の非感染性疾患において、新たな疫学転換に直面している」と述べた。

 ダジュネ氏のチームによる今回の研究では、がんは2017年における世界の死因第2位で、死亡者数全体の26%を占めたことが明らかになっている。心疾患の罹患(りかん)率は世界的に低下しており、がんは「ほんの数十年以内に」世界の死因トップになる可能性があると、ダジュネ氏は指摘した。

 今回の研究は、高・中・低所得の国、計21か国の成人16万人以上を10年間にわたり追跡調査した。この結果、低所得国の人は高所得国の人に比べ、心疾患が原因で死亡する確率が平均で2.5倍だったことも分かった。逆に低所得国では、がんや肺炎など非感染性疾患が高所得国に比べて少なかったという。

 また、同じくカナダの研究チームによる二つ目の研究では、同じ21か国の患者のデータを調査した結果、いわゆる「修正可能な危険因子」が世界の心疾患原因の70%を占めていることが明らかになった。修正可能な危険因子には、食事、行動、社会経済に関する因子が含まれるという。

 高所得国では、高コレステロール、肥満、糖尿病などメタボリック危険因子が心疾患の原因の40%以上を占めており、疾患決定要因の理由として抜きんでていた。一方、発展途上国では心疾患と家庭大気汚染、偏った食生活、教育水準の低さの間に強い関連性が認められた。

 カナダ・マクマスター(McMaster University)大学のサリム・ユスフ(Salim Yusuf)教授(医学)は「低および中所得国の政府は、感染症対策に大きく焦点を合わせるよりも、心疾患を含む非感染性疾患の予防と管理に多くの国内総生産(GDP)を割くようにすべきだ」と述べた。 (c)AFP