【9月3日 AFP】米フェイスブック(Facebook)が来年発行を予定している仮想通貨(暗号資産)「リブラ(Libra)」が広範囲にわたって採用された場合、ユーロ圏経済に対する欧州中央銀行(ECB)の管理能力が侵害され、ユーロ自体の価値が脅かされる恐れがあるとECB幹部が2日、警鐘を鳴らした。

 フェイスブックは6月にリブラの概要を公表。ビットコイン(Bitcoin)など先行した仮想通貨に生じている大幅な価格変動を回避するため、資産でその発行を裏付ける仕組みとなっている。

 リブラを用いた金融サービスは2020年前半に運用が開始される予定だが、世界各地の中央銀行関係者や政治家、規制当局は不信感を抱いている。

 ECB理事会のメンバー、イブ・メルシュ(Yves Mersch)氏は「リブラの受け入れ度合いと準備金としてのユーロへの評価次第では、ユーロに対するECBの制御力が低下する恐れがある」とコメント。

 さらに、リブラは「ユーロ圏内の銀行の流動性ポジションに影響を及ぼし、例えば欧州単一通貨の需要を減少させるなどしてその国際的な役割をむしばむことで、金融政策の波及経路を阻害する」恐れがあると同氏は述べた。

 フェイスブックには全世界で約20億人のユーザーがいることから、同社はネットワーク効果によって、非常に多くのユーザーにオンラインショッピングや金融サービスの利用、支払いの際にリブラを利用させることが可能となる。

 メルシュ氏は、「欧州市民が従来の支払い処理や支払い経路の安全性や健全性を投げ捨てたいという気にさせられて、フェイスブックの魅力的ではあるが危険をはらむ契約を選ぶことがないよう切に願っている」と語った。(c)AFP