【9月4日 Xinhua News】中国江西省(Jiangxi)南昌市(Nanchang)にある前漢時代(紀元前206年~8年)の諸侯墓、海昏(Haihun、かいこん)侯劉賀(Liu He)墓の主椁室(ひつぎをおさめた部屋)から2015年末、ふた付きの木製漆器の箱の半分程度まで入った冬虫夏草類のサンプルが見つかった。中国工程院院士(工学アカデミー会員)で中国中医科学院の黄璐琦(Huang Luqi)院長は8月30日、新華社(Xinhua)通信の取材に応じ、所属する研究チームが3年間研究を行った結果、このサンプルがゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)アカヤジオウ属(Rehmannia)植物の根で作られた中国医薬の加工調整に使われる「炮製薬材」で、表面にデンプンやサッカロースなどの成分が含まれていることがわかったと述べた。

 黄氏の研究チームと江西省文物考古研究院の考古学研究者が共同で執筆した論文は中国の学術誌「科学通報」に掲載された。論文では中国医薬の加工調整技術が国家級無形文化遺産となっており、中国医学における薬材利用の特徴を示すものだと指摘。調整薬材に関する最も古い記載は「黄帝内経」に見られるが、加工調整技術についての記述は簡潔で、伝統的な技術を復元させ、当時の技術で加工調整することは困難だとしている。

 黄氏は研究チームがマイクロスコープや質量分析法、核磁気共鳴法、3D再構成法などさまざまな現代技術を用いて、サンプルがゴマノハグサ科アカヤジオウ属の植物の根と補助材料の層で構成されていることを解明したと紹介。これまでに中国で見つかった中で最も古い中国医薬の加工調整薬材の実物だと述べた。

 研究チームのメンバーで安徽中医薬大学教授の彭華勝(Peng Huateng)氏は、新鮮な食用のアカヤジオウは適切な加工調整が必要だと説明。研究チームが出土サンプルを分析した結果、アカヤジオウ属植物の根を蒸したり煮たりした後、デンプンやサッカロースなどの補助材料を包んだものだと推定したことを明らかにした。補助材料にデンプンやサッカロースを用いたのは、加工調整で生じる「味やにおいを緩和させて服用しやすくする」効果と関連する可能性があるとしている。(c)Xinhua News/AFPBB News