2019.09.21

CARS

V90ディーゼルに乗って、京都のパンを巡る旅へ パンダフル・ドライブ!

世界に誇る観光都市・京都は実は日本有数の“パンの町”でもあるという。旧き佳きパンを探して、一泊二日の旅に出た。

ちょっと変わった試乗案内

実家の近所の古い和菓子屋が作る食パンは、毎朝のテーブルに欠かせない存在だった。黙々と働く職人の手さばきと店番をするおばちゃんの笑顔を見ながら、菓子パンや惣菜パンを選ぶのも小さな幸せだった。時は流れ、和菓子屋は廃業。以来、年季の入ったパン屋さんを見つけるたびに足を運ぶのが習慣になった。けれど、素朴で安価で懐かしいあの味には、いまだに再会できていない。


長雨の続く7月中旬、ボルボ・カー・ジャパンから少し変わった試乗会の案内があった時、ふと、このパンたちのことを思い出した。試乗車はボルボV90D4、日程は1泊2日。行く先は自由。時間に追われ、豊かとはいえない普段の忙しい生活から少しだけ離れたい。そこで前々から考えていた京都旅行の計画を、V90で実行に移すことにした。


実は京都、パンの消費量は全国1位らしい。ご当地パンもたくさんある。地元愛の強い土地柄ゆえ老舗パン屋さんの数も多い。もしかしたら京都なら、あの味にまた会えるかもしれない。しかもそんな老舗店のほど近くに、パンの専門家、パンシェルジュの選んだ朝食を味わえる、町家を改装した長期滞在型の宿もある。こうして7月最後の週末、V90で行くパンづくしの旅がはじまった。


東京を出たのはお昼頃。梅雨明けと共に張り出した太平洋高気圧のせいで外は40℃近いが、強力なシート・ベンチレーションのおかげで座ると同時に汗がすっと引くのがありがたい。


現行V90には前輪駆動の仕様しかないが、高速道路上ではややスローなステアリング・フィールと、大陸的でゆったりした脚の仕立てがピタリと合っていて、かつての穏やかな後輪駆動時代のボルボの乗り味を思い出す。当時とまるで違うのは190ps/40.8kgmを発揮する最新の2リッターディーゼルだ。巡行中は掛かっているか分からないほど静かな上に、右足を深く踏み込むのが躊躇するほど、容易に1.8tの車体を力強く引っ張っていく。


ワンダフル・ルート

名神・大津ICに到着する頃には、平均燃費の数値は20km/リッターに届こうとしていた。ここから一般道で琵琶湖を右手に北上し、奥比叡と比叡山の2つのドライブウェイを目指す。



約20km続く峠道を存分に楽しんで、それから京都入りする計画だ。日は傾き、動物注意の看板が続く。けれど気がつけばみるみる速度は上がっていった。特に奥比叡側はコーナーに適度にバンクが付いていてものすごく走りやすい。脚がしなやかに大きくストロークして路面を離さないのがよく分かる。


シフトを前後に手動で操作すれば、急な比叡山へ続く登りをものともしない。V90が優れたグランド・ツアラーであることは重々承知していたけれど、ここまで峠道で生き生きした姿を見せるとは思ってもみなかった。



峠道の後で出会った見事な夜景。

ドライブウェイの終点近くでは、琵琶湖を見下ろす雄大な景色に出会うことができた。撮影を終えるともう真っ暗だ。急いで山を下り、京都・五条駅近くの宿、イエノ家に向かう。到着後すぐ坪庭の露天風呂で汗を流したのだが、あまりに気持ち良かったせいか、湯船から出ると夕食も早々に気を失ってしまった。






宿泊したイエノ家は最大6名まで滞在可能で、坪庭と露天風呂付き。パンシェルジュの朝食を楽しめる町家は他に5軒ある。詳細はHPを。
https://kyonoie.co.jp



翌早朝、祇園へ撮影に出てイエノ家に戻ると、丁度パンシェルジュの榎 友寿さんが到着したところだった。彼には事前に「昔ながらの味わいのパン」をオーダー済みだ。


テーブルに並んだのは、志津屋のハムサンド・カルネ、まるき製パン所のカレー味の生地にハムを挟んで揚げたニューバード、ササキパンの2種類の形のメロンパン、さらに汎洛(ぱんらく)のクロワッサンと食パンなどなど老舗店の逸品がずらり。


とても食べきれないと思ったが、どれも味わい深い上に口当たりがよく、気がつけば完食。中でも汎洛の食パンが思い出の食パンの味に比較的近かったのは、うれしい発見だった。


パンシェルジュが選び、サーブしてくれた朝食(の一部)。


パンシェルジュの榎 友寿さん(絵本『カラスのパンやさん』のTシャツに注目!)。


彼によれば、観光客のごった返す外にあえて出ず、町家で何もせずのんびり何日か過ごす人が最近増えているという。京都という非日常の場で、あえて普段通り心穏やかに日常の生活をしてみる。これぞ町家という素の京都を味わえる空間ならではの、豊かな生活なのかもしれない。




2日目の昼食は創業100年の大正製パン所へ。クリームパンは思い出の味そっくり。




コッペパンも有名な昭和22年創業のまるき製パン所(写真左下)。ハムロール(写真手前)が美味。



もう1つ、彼に聞いてなるほどと思ったのは、長年愛されているパンも時代に合わせて進化しているということ。当時の原材料や製法は、現代の環境や規制と相容れないものもある。思い出の味は、もはや再現が難しいのかもしれない。


パンだけじゃない。クルマもしかりだ。でも僕はこのパンづくしの旅を経て、それもいいのかもしれないと思いはじめていた。京都のパンもボルボも、伝統を受け継ぎながら、ともに変化を恐れず、しっかり前を見ていることが改めて実感できたからだ。



今回訪れたパン屋さんや町家からは祇園や平安神宮はクルマで15分ほど。2日間の総走行距離は1100km強。平均燃費は16.3km/リッターだった。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人

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