■補償問題は解決済みなのか

 ドイツ政府はナチスによる戦時中の残虐行為の責任は認めているが、補償についてはポーランドであれギリシャであれ、要求を拒み続けてきた。「ドイツ政府の立場は変わらない。ドイツの補償問題は、法的にも政治的にも解決済みだ」と政府報道官は言う。

 ポーランドは旧ソ連の衛星国だった1953年、同じ共産国だった旧東ドイツに対し、第2次世界大戦中の補償請求権を放棄している──これがドイツ政府の主張だ。

 1990年、ドイツの再統一に向けて、東西ドイツ2か国と第2次大戦の対独戦勝4か国からなるツープラスフォー(2+4)会議(Two Plus Four Conference)が開かれた後、ドイツとポーランドは国境条約に調印。続けて翌91年には、善隣友好条約を結んだ。その間、補償問題が提起されることはなく、問題は解決済みとの暗黙の了解があると、ドイツ政府はみなしている。

 しかし、ポーランドの保守派は、1953年の旧東ドイツとの合意はソ連の圧力下でなされたものだと主張し、その有効性に異議を唱えている。またドイツには、ポーランドへの補償に関する「道徳的義務」があるとも主張している。

 ポーランド政府は今のところ正式な補償請求は行っていない。だが、PiSのムラルチク議員はこの問題への取り組みは必須だと強調し、「(補償)問題が解決されないままでは、第2次世界大戦中にドイツ人が果たした役割を相対化するところまで行ってしまう」と言う。

 1939年、ポーランドの西側からドイツが侵攻した2週間後、今度は東側から旧ソ連が侵攻を開始した。だが、ポーランド外務省はAFPの取材に対し、「ポーランドとしては、ロシアに対する戦後補償の問題を現時点で持ち出していない」と詳細には触れずに答えた。(c)AFP/Stanislaw WASZAK / with Mathieu FOULKES in Berlin