【8月31日 AFP】米国は30日、イランの大型石油タンカー「アドリアン・ダリヤ(Adrian Darya、改名前はグレース1<Grace 1>)」をブラックリストに追加した。米国は同タンカーをめぐり、警告を繰り返していた。

 英領ジブラルタル(Gibraltar)警察と英特殊部隊は7月4日、欧州連合(EU)の制裁に違反してシリアに石油を輸送していた疑いがあるとして、ジブラルタル沖でこのタンカーを拿捕(だほ)。米政府はタンカーの差し押さえを要請していたが、ジブラルタル側はこれには応じず、6週間後に解放した。タンカーの動向をめぐっては、さまざまな臆測が飛び交っている。

 米財務省は30日、反テロ法により、このタンカーを「凍結資産」に指定すると明言。「アドリアン・ダリヤ1を支援する者は誰でも、制裁対象となる恐れがある」と主張した。同法では例外を除き、凍結資産の取り引きを米国民が行うことはできない。また、タンカーの船長も制裁リストに追加された。

 イラン側は、タンカーが同盟関係にあるシリア政府に石油を輸送していたとする主張を否定。タンカー上で「石油を売った」ことを26日に発表した上で、購入者が石油の行き先を決めると主張。購入者の身元や、売買が行われた時期が、ジブラルタルで拿捕される前か後かについては明らかにしなかった。

 専門家らは、シリアの港を最終目的地として、海上で別のタンカーに石油を積み替えていた可能性が高いと指摘している。

 海運監視ウェブサイトによると、タンカーは現在、地中海の島国キプロスの西側を航行している。(c)AFP/Jean-Marc Mojon