【8月31日 AFP】インド北東部アッサム(Assam)州で30日、主にイスラム教徒数百万人の市民権喪失につながる恐れのある国民登録簿(NRC)の発表を翌日に控える中、当局は治安要員1万7000人を配備して厳戒態勢を敷いた。インド政府は国民登録簿を全国で導入していく方針。

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 31日に発表される国民登録簿から漏れた人は市民権を喪失し、施設への無期限の収容や国外追放という処分を受ける可能性がある。このため国連(UN)の専門家や人権活動家らが警鐘を鳴らしていた。

 数十年にわたり宗教間・民族間の対立の温床となってきたアッサム州の当局は、治安要員1万7000人を配備したほか、一部エリアでの集会を禁止し、「サイバー部隊」によるソーシャルメディアの監視も行っている。

 飛び地のような格好になっている人口3300万人のアッサム州には、英植民地時代と1971年のバングラデシュ独立戦争の際などに多数の移民が流入。純粋なアッサム人を自称する人々が長年にわたり、持続的な解決を求めて圧力をかけてきた。

 国民登録簿に記載されるには、自身または祖先が1971年以前からインドで暮らしていたことを証明しなければならない。しかし、識字率が低く証拠書類を持たない人が多い貧しい地域では、こうした複雑な手続きは非常に困難だ。

 予想にばらつきがあるものの、約200万人が国民登録簿最終版から漏れるとみられている。漏れた人々には特別な外国人裁判所に異議申し立てを行う期間が120日間与えられる。政府はこの期間を延長するとしている。しかし、外国人裁判所の判事は不十分な資格しか持っていないことが多い上にノルマ達成に走りがちで、手続き全体が矛盾や間違いだらけだとの非難の声も上がっている。

 異議申し立てを却下され、他の全ての司法手続き(政府は法律扶助を約束している)も尽きた人々は、外国人と認定され、6か所ある収容施設のいずれかに入れられる可能性がある。

 新たに10か所で収容施設の建設が発表されており、アッサム州の中心都市グワハティ(Guwahati)の西にあるゴアルパラ(Goalpara)では3000人収容可能な施設が建設中だ。アッサム州政府によると、こうした収容所は以前から運営されており、現在1135人が収容されている。

 メディアの報道によると、国民登録簿への不安から、これまでに40人以上が自殺した。

 国民登録簿を推進してきた一人、全アッサム学生連合(AASU)のサムジャル・バッタチャルヤ(Samujjal Bhattacharya)氏は、アッサム州先住の「土着の子」を守るために国民登録簿が必要だと主張している。

 バッタチャルヤ氏は、「われらは、先祖伝来のこの土地で二級市民のような暮らしに甘んじるつもりはない」「インドはインド人のものだ。アッサム州と北東部もインドなのでインド人のものであり、不法なバングラデシュ人のものではない」と訴えた。(c)AFP/Anup Sharma