【8月31日 AFP】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は29日夕、訪問先の中国・北京で習近平(Xi Jinping)国家主席と会談し、南シナ海(South China Sea)の領有権問題を取り上げたが、習主席はこの問題で一切譲歩しないという従来の姿勢を改めて示した。

 中国はフィリピン沿岸に近い海域を含め、南シナ海のほぼ全域に主権を有すると主張しているが、オランダ・ハーグ(The Hague)の常設仲裁裁判所はすでに、法的根拠がないとして中国側の主張を退けている。

 ドゥテルテ氏は2016年の大統領就任以降、中国から援助や貿易、投資を引き出すため南シナ海をめぐる仲裁裁判所の裁定を棚上げし、それまで冷え込んでいた中国との外交関係を活性化させた。この問題を習主席との会談で取り上げたのは、ドゥテルテ氏の方針転換を示すものだ。

 両国の係争海域で6月、フィリピン漁船が中国のトロール船に衝突されて沈没した事故を受け、フィリピンでは大統領に中国に対抗するよう求める圧力が高まっている。

 フィリピン大統領報道官が30日に明らかにしたところによると、習主席はドゥテルテ大統領との会談で、仲裁裁判所の裁定を認めず、一切譲歩しないという中国政府の立場を改めて表明した。

 中国外務省の声明によれば、習主席は南シナ海問題で両国は「論争を脇に置き、外国からの干渉を排除」し、一帯における「沖合での石油・ガス共同開発でより大きな進歩を遂げる」べきだと述べた。

 マニラにあるデラサール大学(De La Salle University)のレナート・デカストロ(Renato de Castro)教授は、大統領任期があと3年しか残っていないドゥテルテ氏はもはや失うものは何もなく、中国に対抗するふりをするために会談で南シナ海問題を取り上げるとみられていたと指摘し、「習主席が無視あるいは拒絶すると見込んでこの問題を取り上げたも同然で、見え透いた下手な芝居だ」と述べた。(c)AFP