【9月4日 AFP】北朝鮮から脱出したリ・グァンミョン(Ri Kwang-myong)さん(31)が韓国に来て最初にしたことは、学校へ戻ることだった。北朝鮮で教育を終えてから12年がたっていた。

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 リさんは韓国ソウルのウリドゥル(Wooridul)学校へ通う数少ない成人の一人だ。この学校では、年を取っていたり、学業に遅れがあったりするためしかるべき公立学校へ通うことができない脱北者らが学んでいる。昨年、韓国に到着してから半年後に学校へ通い始めたリさんは、「北で教育を受けて卒業もしたが、あまり知識がない」と語った。

 韓国には特別な目的のために設立された学校が7校あり、そのうちの一つであるウリドゥル学校には約60人が在籍している。同校のユン・ドンジュ(Yun Dong-ju)校長は、ここでは韓国での生活を「左右する」教育が無償で脱北者に提供されていると話し、「少なくとも文化、言語、社会、歴史の再教育は不可欠だ」と続けた。

 北朝鮮は、自国の識字率は100%で、無償の義務教育が社会主義体制の優位性を示していると豪語する。だが、貧困にあえぐ北朝鮮から逃れて来る人々は、基本的な知識を欠いているため韓国で苦労することが多い。

 脱北者らによると、北朝鮮の学校では指導者の称賛に多くの時間が割かれている他、極度の貧困や国外への脱出によって教育が中断されることも多い。また、1990年代半ばに国家経済が破綻し、飢饉(ききん)で数十万の犠牲者が出た時、多くの子どもが教育を断念せざるを得なかったという。

 北朝鮮の教育カリキュラムでは、北朝鮮を支配する金一族に焦点を当てた革命についての授業が最重要科目の一つとなっている。

 この授業は6歳から始まり、週に2時間行われる。子どもたちが学ぶのは、建国の父、故金日成(キム・イルソン、Kim Il-sung)国家主席と、その息子で後継者である金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-il)総書記の幼少時代の公式版の記録だ。金日成氏と金正日氏はそれぞれ、現指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長の祖父および父にあたる。

 AFPが北朝鮮の先鋒(Sonbong)にあるマンボク(Manbok)高校を取材に訪れた際、リ・ミョングク(Ri Myong-Guk校長は「政治的および革命的歴史を教えることは、偉大な指導者の愛情と思いやりに感謝を抱くために重要だと考えている」と語った。(c)AFP/Sunghee Hwang