■もし韓国だったら…

 韓国系米国人の映画監督、グレン・モーリ(Glenn Morey)さんは1960年、ソウルで生まれた。生まれて間もなく実親に見捨てられ、生後6か月で白人米国人夫婦の養子となった。

 モーリさんは、コロラド州デンバー(Denver)で育ったが、学校では自分以外みな白人で、溶け込むのが大変だったという。

「成長過程で毎日困難に直面して…少なくとも他のみんなと同じ外見をしている韓国だったら…韓国で育っていたらどうだったのだろうかと考えるようになった」

 モーリさんは監督作『サイド・バイ・サイド(Side by Side、原題)』で、この問いに答えを出そうと試み、一定年齢を迎えて施設からの独立を余儀なくされた12人を含む、韓国で過去数十年間に孤児となった人々を対象にインタビューを行った。

■母親のうそ

 韓国では血筋が重要視されており、親に捨てられたという事実は一生付きまとう。就職や交際における差別もある。そのため、孤児院で過ごした過去を義理の家族や配偶者、雇用主に秘密にしている人もいるとジョさんは話す。

 ただ、ジョさんの境遇は少し違った。勉強ができたことから孤児院の施設長が大学の学費を提供してくれたというのだ。現在はタクシー運転手として働き、結婚して自分の子どももできた。また、年齢を理由に施設からの独立を余儀なくされた孤児のための権利団体も立ち上げた。このような団体はこれまで韓国にはなかった。データによると、メンバーの93%には犯罪歴があったり、ホームレスだったり、また違法産業で働いていたりした過去があったという。

「これがわれわれの現実」とジョさんは話す。

 昨年、ジョさんはついに母親と再会した。しかし、疑問が解消されることはなかった。

 母親は、ジョさんの父親がギャンブル依存症で虐待行為にも及んでいたことを打ち明け、またそのような状況から逃げだすために別の男性との結婚を模索し、そのために過去を隠す必要があったと説明したという。

 しかし、この説明にジョさんは、「なぜ少なくとも母は、私を父や祖母に預けなかったのだろう。なぜ父親に私が死んだとうそをついたのだろう」と解せない様子で語った。

「自分の中でまだ整理できてない。とても、とても難しい」 (c)AFP/Claire LEE