【8月28日 東方新報】中国の共産党中央と国務院がこのほど、深セン(Shenzhen)に「中国の特色ある社会主義先行モデル地区」を建設する方針を打ち出した。改革開放の41年間で、小さな漁村から人工知能(AI)やIT関連のイノベーション企業がひしめき、世界が注目する未来都市に発展した深センで、さらに新たな実験的政策が進められる。

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 8月18日に発表された「中共中央国務院の深センにおける中国の特色ある社会主義先行モデル区建設支持に関する意見」によれば、深センを法治モデル、都市文明モデル、民生幸福の指標となる、持続的発展可能な戦略的都市に位置付けるという。同時に、イノベーション推進・発展戦略、現代産業システム構築の加速、競争力のある文化産業・観光業の発展、教育医療水準の引き上げ、社会保障システムの完成、エコシティーに向けた新しい取り組みなどを推進するという。タイムスケジュールとしては、2025年までに深センの経済実力、発展クオリティーを引き上げ、現代的・国際的イノベーション型都市の建設を実現、2035年までに国際的影響力を持つ社会主義現代強国都市モデルに仕上げる。今世紀半ばまでには世界の先進都市のトップに立ち、競争力、イノベーション力、影響力とも卓越したグローバル都市モデルにしたい考えだ。

 中共深セン市委員会党校・習近平(Xi Jinping)新時代の特色ある社会主義思想研究センターの陳少雷(Chen Shaolei)主任は今回打ち出された政策について「時代を区切る大きなマイルストーン」と評価。「深セン経済特区が我が国の改革開放の重要な窓口となり、深センに続くように現代的大都市の建設が始まった。今回も深センが先行モデルとなって、他都市の目標として戦略を導き、制度を支えていくだろう。やがて、世界を刮目(かつもく)させるような新たな奇跡をまたつくり出せるのではないか」と期待を寄せている。

 中国は40年前、小さな漁村にすぎなかった深センを経済特区に指定し、社会主義市場経済という壮大な実験に着手。この実験が、中国が世界第2の経済大国に至るという奇跡の始まりだった。いまや深センは、華為技術(ファーウェイ、Huawei)、騰訊(テンセント、Tencent)、比亜迪(BYD)といった世界的ハイテク企業が集中し、キャッシュレスや自動運転が実現する未来型ハイテクイノベーション都市として世界の投資家たちから熱視線を浴びている。香港に隣接し、香港の「一国二制度」の経験も吸収してきた深センは、今年1月末に打ち出された「粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)」構想の中心地として、大規模デモが続き機能まひに陥る香港の国際金融・貿易センターの役割を引き継ぐことも期待されている。「一国二制度」を新たな形で実践し、香港の矛盾を解決し融合を進めるという祖国統一モデル都市への実験も試みられるとすれば、再び深セン発の奇跡を近い将来目にすることになるかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News