【8月27日 AFP】米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元選手を対象に行われた調査で、過去に脳振とうを起こしたことがあると、その後、男性ホルモンのテストステロン値の低下や勃起不全(ED)を発症する危険性が高いことが分かったとの研究論文が26日、発表された。

 米ハーバード大学(Harvard University)の研究チームは、NFLの元選手3400人以上を対象に聞き取り調査を実施した。調査では、過去に脳振とうの症状を経験したかどうか、低テストステロン症やEDの投薬治療を受けているか、または勧められたことがあるかどうかについて尋ねた。

 平均年齢53歳の元選手全体のうち、低テストステロン症とEDを示す人の割合はそれぞれ約18%と23%だった。高血圧、糖尿病、高コレステロールなどを含むその他の変数を調整した結果、脳振とう症状が「非常に多い」グループは、脳振とう症状が最も少ないグループに比べて、低テストステロンとEDの症状を訴える確率が約2倍高いことが明らかになった。

 米医学誌「JAMAニューロロジー(JAMA Neurology)」に掲載された論文の筆頭執筆者のレイチェル・グラショー(Rachel Grashow)氏は、AFPの取材に「脳振とう症状の申告と、EDと低テストステロン症を訴える確率との間の非常に強い関連性が、今回の研究で明らかになった」と語った。

 考えられる説明は、脳振とうに関連する下垂体機能低下症だと、論文の執筆者らは指摘している。下垂体機能低下症は、脳の基底部にありホルモンの分泌を調節する脳下垂体の病気だ。

 今回の研究の制限事項としては、低テストステロン値やEDを研究者らが直接測定せずに、自己申告による指標を代わりの尺度として用いた点が挙げられる。また、研究チームは当初、元選手1万3000人以上に連絡を取ろうとしたが、返答があったのはそのうちの25%のみだった。

 グラショー氏は、今回の研究は、頭部外傷を負ったボクシング選手や軍人のホルモン機能不全に関する調査の先行研究を踏まえて行われたが、研究チームとしては、「EDの症状の重さがどのような役割を演じているかを詳細に調べるために、この母集団や他の母集団で追跡調査したい」と述べている。(c)AFP